第37話 奥様たちによる饗宴(フルボッコ)

「ネイリー。武器外して」


 オレ、革鎧とかの外し方知らんので頼んますわ。


「皆。やるよ」


 と、なぜか奥様たちの手に棒が握られてます。なんで?


 奥様たちが傭兵を囲むと容赦ないフルボッコ。いやいやいや、オレの言葉をどう解釈したらフルボッコになんのよ? 君らの頭についた耳は人と違うのか?


「……殺さないでね……」


「大丈夫。手加減はしてるわ」


 オレにはそう見えないのだが、ま、まあ、うん。信じるよ……。


 生きてる? と、思わず聞きたくなるくらい容赦ないフルボッコを受けた傭兵ども。


 そんな傭兵どもの姿に満足した奥様たちは、革鎧を外してスッポンポンにする。


 ……あれで死なない傭兵もどうかと思うが、一切傷つかない革鎧もスゴいな。どうなってんのよ……?


「武器以外好きにして」


 オレは金属があればいい充分。ふふ。また新しい深底のフライパンが作れるぜ!


 なんて楽しみはあとにしてだ。傭兵どもの尋問といきますかね。


「一人、連れて来て」


 頼もしい奥様たちにお願いすると、意識のあるヤツの足首をつかまえてオレの前に差し出してくれた。


「仲間いる?」


「…………」


 返答は沈黙であった。


「しゃべるんだよ!」


 奥様の一人が棒で傭兵を殴った。本当に容赦ねーな。まあ、してやる必要もないけど。


「…………」


 何度か殴られるも傭兵はしゃべらない。憎々しげにオレを睨んでいた。


「しゃべらないならいらない。殺して」


 まだ七人もいる。この傭兵にはしゃべりたくなる潤滑油となってもらいましょう。


「任せておきな!」


 その傭兵は何か布の塊を口に突っ込まれ、奥様たちによる饗宴が開始された。うん。奥様たちとは仲良くやっていこう。


 饗宴は五分もしないで終了。


「もー! タエラ、力入れすぎだよ! もう死んだじゃないか」


「ごめんごめん。つい熱くなっちまってさ」


 恐いわーこの世界。繊細なオレにはついていけんわ~。


「次」


 なんて非情なオレのセリフではありませんね。メンゴ。


「次はこの活きのいいのにしようか。ほれ」


 まるで魚をシメる感覚だな。言うほど活きはよくないけど。


「仲間はいる?」


「…………」


 口を割らない、と言うよりは恐怖でしゃべれないって感じだな。さすがの傭兵も奥様たちの饗宴にはビビる様だ。


「──や、止めてくれ! しゃべる! しゃべるから殺さないでくれ!」


「チッ。根性なしが!」


「粗〇ン野郎が」


 ここに六歳の女の子がいるんだからそんなお下品な言葉は止めてちょうだい。


「仲間は何人?」


「ここにいるだけだ!」


 ハイ、ギルティ。奥様たち。やっちゃって~。


「今度はゆっくりだからね!」


「わかってるよ!」


 二度目の饗宴スタート。今度は十五分くらいは保ったかな? 奥様たちは不満そうだけど。


「リン! 戦奴狩りどもを連れて来たぞ!」


 町のほうから来た傭兵どもの死体……おや、生きてんじゃん。シルバーったら手加減したのかな?


「ガウガウ」


 へー。結構強かったのか。だから生き残ったワケね。


 ってか、こいつら金属の鎧を纏ってるじゃん。しかもかなり精巧な。やはりこの世界はオレが想像してるより発展してるかもしれんな。


「鎧以外好きにしていい」


 これだけの金属があればダルマストーブとか作れそう。あ、風呂釜でもいいかも。夢が広がるな!


「いいのか? こいつらの剣は結構いいものだぞ。金もある様だが……」


「いらない」


 大漁のときは皆で分かち合わないと罰が当たるってもんだ。皆で幸せ(共犯)になろうぜ。


 野郎も混ざり、傭兵どもがスッポンポンにされる。ちなみに息子さんはモザイクかけて見えない様にしておりますのであしからず。


「次」


 平等に町から来た傭兵に尋ねてみましょうか。奥様たち。よろしく。


「じゃあ、こいつにするか」


 小狡そうな男がオレの前に引きずり出される。


「仲間は何人?」


「しゃべるんだよ!」


 いきなり男を殴る奥様。せめて五秒は待ってあげなさいよ。


「……二、十五人……」


 ひい、ふう、みい、よう、いつ、むー、なな、やー、ここの、とお、なんちゃらかんちゃらはいほいはい。二十五人ですね。ハイ、ギルティ。


「いらない」


「──まっ、待ってくれ! 本当だ! 本当に二十五人なんだよ! 信じてくれ!」


 アイテムボックスから狙撃してきた男の弓を出す。


「仲間外れは可哀想」


 先に死んだ仲間が浮かばれないじゃないか。ダメだな~。


「ほらほら。ウソつきはこっちだよ」


「あたしらが仲間の元へ送ってやるから仲間外れにしたことちゃんと謝るんだよ」


 ボッコボコのギッタギタ。めでたく仲間の元へ旅立ちました。もし、神様に会ったらオレの代わりに中指立てておいてね~。


「リン。こいつが頭だと思うぞ」


 ジェスの仲間が厳つい男をオレの前に引きずり出した。


「団長?」


「…………」 


また沈黙か。そろそろ付き合い切れんのだがな。


「生き残れるのは三人。他いらない。誰?」


 早い者勝ちたよ。ほらほら。


「おれがしゃべる!」


「しゃべるから殺さないでくれ!」


「しゃべるから助けてくれ!」


 ハイ。勇気ある決断ありがとうございました。では、残りはいらないね。奥様たち。やっちゃって~。


「ジェス。連れて来て」


 阿鼻叫喚地獄絵図。静かなところでお話しましょうね~。

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