第10話 ノーパン幼女

 魔力回復薬になる薬草ゲットだぜ!


 まるで原生地かよと突っ込みたくなるくらい、魔力回復薬になる薬草がいたるところに生えていた。


 まあ、鑑定したらそれほど上質ではないみたいだけど、百グラム程度でイモ四つは創り出せるほどには魔力が回復してくれるのだから、オレにしたら万々歳だわ。


 それに、手のひらの創造魔法で成分を濃縮。苦みとえぐみを排除。飲みやすいように味の変革。容器製作で一日の魔力が吹き飛ぶが、一日三回は魔力回復できる薬ができあがりましたとさ。イェーイ!


 事実上、魔力が三倍になれば生活向上に注げる。ノーパン生活ともおさらばだぜ!


 ノーパンだったの!? と驚くのも当然。オレもパンツがない文化にびっくりしたもんだわ。


 まあ、パンツはないが麻だかなんだかのズボンはある。が、四歳児にそんな高価なものは与えられない。貫頭衣と言うのもおこがましい布に穴を開けたものを着せられて終わりである。


 ……オレ、女の子なのに……。


 なんて四歳児に恥じらいもないが、ノーパンはさすがにキツい。用足しは楽だけど。それと四歳児の肌に葉っぱは優しくないから要注意な。


 ちなみにねーちゃんは六歳でズボンと貫頭衣を与えられました。


 手のひらの創造魔法よ、我にパンツを与えたまえ!


 四歳児が履くパンツ知らんので、ボクサーパンツにさせていただきました。履き履き。


「……なんだろうな。この虚しい思いは……?」


 虚無感に負けそうになるが、前世より幸せになるためには負けてらんねーよ! 望めよオレ。負けるなオレ。幸せは勝者にだけ与えられるのだ!


 挫けぬ精神でボクサーパンツを四枚創り、ねーちゃんの分も四枚創る(七歳児のパンツも知らんので同じにしました)。ねーちゃん。お履き。


「なんかキツいんだけど」


「履いてるうちに慣れるし、よさがわかるよ」


 蒸れない臭わない汚れないのスーパーパンツだ。でも、毎日取り替えるんだよ。


「……あんたの魔法、日に日に凄くなってるよな……」


「ねーちゃんの魔法だって日に日に凄くなってるじゃん」


 肉体強化魔法を覚えてからってもの、ゴブリンの首を捻じ切ってるじゃん。楽しそうに。快楽殺人に走らないか心配でしょうがないよ。


「それでも熊には勝てないよ」


 それ、悔しそうに言うことじゃないから。七歳児じゃ無理だから。無謀に突っ込むの止めてよ。


「ってか、熊いるの!?」


 思わず突っ込んじゃったけど、熊がいるなんて初耳なんですけど!?


「山の中で見た。あれには勝てない……」


 だから勝とうと思うほうが間違ってるから! 見たら速攻逃げなよ! 挑んじゃダメだからね!


「そこまでバカじゃないよ」


 そうであって欲しいけど、このねーちゃん激情家だからなぁ~。キレたらやりそうだよ。なんか対策考えておくか。間違いが起こる前に、な。


 いろいろ対策案を講じたりして、魔力回復薬、下着に服、畑仕事と、忙しいながら平和な日々を送っていると、やはりねーちゃんがやらかした。


「リン。ナナリが熊と戦ってる」


 ねーちゃんの監視を任せていた四丸が飛んで来て、そんなことを告げた。


「どこだ?」


「山から流れる川の側」


「ねーちゃん、まだ生きてるな?」


「生きてる。三丸が援護している」


 四丸たちには辛子弾を搭載させ、熊を見たら追い払えと命令していた。なのに、家のすぐ近くまで接近されたとは。まだまだ死角があるってことだな。


 なんてことはあとだ。まずはねーちゃんを助けないと。


「四丸。お前も援護に向かえ」


「カァー!」


 飛び立つ四丸を追ってオレも駆け出した。


 四歳児がいってどうするん? と疑問に思う方々にお答えしよう。どうもできんわ! だが、見殺しにはできんだろう! 今生の家族なんだから!


 と、意気込んで駆けつけて見れば血塗れのねーちゃんがデッケー熊を倒していましたとさ。めでたしめでたし。


「──なワケあるかぁー!」


 急いで回復薬を飲まし、手のひらの創造魔法でも回復させる。


 なんとか傷は癒えたが、相当無茶したようで丸二日寝込んでしまった。


「……生きてた……」


 目覚めてからの一言。無我夢中で戦ってたようだ。


「まったく、無茶して!」


「……うん。無茶した。ごめん……」


「生きてるならいいよ。元気になるまで寝てな」


 水に栄養素を混ぜて飲ませていたから体力の落ち込みはそうないはず。起きてからいっぱい食いんしゃい。


 それから丸一日寝て、起きたらフードファイターも顔負けなくらいの料理をかっ食らった。


「もっと強くなる!」


 小さい頃から残虐してるせいか、ねーちゃんのメンタルは超合金のようだ。さらなる強さを求めてゴブリンや狼をぶっ殺してますわ~。


 なんて呆れ果ててたら、また熊と戦うねーちゃん。だが、今回はそれほど強くなかったようで、苦もなく倒したそうだ。


「で、その仔熊はどうしたの?」


「食えるんじゃないかと持って来た」


 首んところをつかみ、暴れる子熊を差し出すねーちゃん。思考が完全に野蛮人となっていた……。


 女らしくなど求めないが、せめて人らしさは求めていこう。取り返しのつくうちに、な。


「食えない?」


「食えないこともないけど、そう美味しいもんじゃないよ。熊って雑食性だから肉が臭いんだ」


 とかなんとか聞いたことがある。もちろん前世でな。


「じゃあ、ぶっ殺すか」


「いや、従魔にして畑仕事をさせるよ。畑、もっと広くしたいからね」


 四歳児に畑を耕すのは大変なのだ。せっかくだから熊に耕させよう。


「あんたはほんと、変なこと考えるよな」


 創意工夫。あるもので貧乏を乗り切れだ。

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