第4話 ゴブリン
六歳児がゴブリンを狩る。またはぶっ殺す。
大抵の人は「んなバカな!」と否定するだろう。まったくもってその通りだ。だが、前世の記憶と手のひらの創造魔法を持ったチートな三歳児が加われば不可能ではなくなるのだ。
まず最初に用意するのは従魔としたカラス一羽。二丸くん、ちょっとお出で~。
次にゴブリンが好む匂いを出す魔法をかけた小石。この場合、二丸くんが持てる小石を選びましょうね。これ、大事だよ。
で、用意が整ったら二丸くんに単独行動をしているゴブリンを探しに出てもらいましょう。頑張って~。
では、二丸くんがゴブリンを探しに出ている間にねーちゃんの準備です。
用意するものは手提げカゴ。ナイフが隠れるくらいがちょうどいいでしょう。あ、魔力もあるし成長型アイテムボックス化しちゃいましょう。糧はねーちゃんの魔力ね。あ、外見も変えられるようにしとくか。手提げカゴじゃしまらないしね。うん。ねーちゃんが冒険者となる頃には大容量になってるはずだ。ねーちゃん頑張れ。
用意が整ったら場所移動。山から見えるところがいいですね。いい感じにクローバーっぽい草が生えてるところにしましょうか。
「では、ねーちゃん。草を採ってる感じでよろしく」
「こんなのでゴブリン狩れるの?」
「大丈夫大丈夫。ほら、さっそく来た。ゴブリンを釣るよ」
今回はオレもエサ役として草を採ってる演技をします。
二丸が来たよとばかりに上空で鳴く。
「リン、どこ?」
「ねーちゃん静かに。リンたちエサなんだから慌てないの」
まあ、美味しくいただかれちゃうのはゴブリンのほうなんだけど、ちょっとは夢を見させてやろうよ。オレたちの糧になってくれるんだからさ。
アホなゴブリンちゃんが登場。下卑た笑いが気持ち悪いですね。
「これがゴブリンか。変な顔」
姉よ。顔のこと言っちゃいけないよ。人は顔より中身が大事なんだから。あ、ゴブリンだから外も中身もダメダメだったね。ねーちゃん、殺っちゃって~。
「死にさらせ!」
とても六歳児が吐くセリフじゃないが、残虐レベル5の幼女にはお似合いなセリフ。難なくゴブリンの喉にナイフを突き刺した。
「ねーちゃん。それじゃ練習にならないよ。もっと攻撃を受けないと」
レベルアップはしても技術はアップしない。熟練度は大切だよ。
「そうだった。顔が気に入らないからつい殺しちゃった」
「今度から棒にしようか。冒険者になったら剣とかも使うんだしさ」
ただ殺せばいいってもんじゃないし、魔物だけ狩ってればいいもんでもない。人を相手にしたり捕獲だったりする仕事もあるはずだ。そのときのために捌きや手加減を覚えないと。
「そうだね。あの醜い顔をもっと醜くしてやる」
まったく、発想が暴力的なんだから。血も糧になるんだから無駄に流さないでよ。
「そう言えば、ゴブリンって食べられるんだっけ?」
「食べられたとしても食いたくないな~。なんか不味そうだし。ねーちゃんは食べる?」
たとえ美味しくてもオレは食わないからね。
「あたしも食べたくないな」
じゃあ、オレの野望の糧としましょう。ねーちゃん運んで。
「もう終わり? まだぶっ殺したいよ」
「死体をこのままにしてたら狼が来るよ。あいつら群れで来るから今のねーちゃんじゃ食われちゃうよ。せめてゴブリンを十匹相手にできるくらいにならないと。それに、棒を用意しないと」
逸る気持ちはわかるけど、事前準備は大切だよ。用意周到、この世界に生まれてから座右の銘になった言葉だ。
「わかった。でも、明日からいっぱいぶっ殺すからね!」
「いいけど、殺したらすぐに穴に捨ててよね」
ねーちゃんの性格と年齢を考えたら不安なので、しばらくゴブリン狩りに付き合った。
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