第3話 残虐幼女

 昨日と変わらぬ今日。あなたはどうお過ごしでしょうか?


 いい日を送ってますか? 有意義な日ですか? 笑顔に溢れてますか? オレは変わらず貧乏な今日を四苦八苦しながら過ごしております。


 異世界革命じゃー! とか叫んで恥ずかしいのですが、貧乏は強敵です。食えないのは地獄です。心が折れそうですわ~。


 ──余裕だな。


 未来に希望がなければ心も折れるが、我に夢と野望のチートあり。今は泥水を啜ろうとも未来は薔薇色のチートが待っているのである。折れそうで止まっているのだからまだオレはやれるのだ。


「そうよ! 薔薇の種は植えたのだ、あとはゆっくりじっくり育てるまでよ!」


 さあ、我が家の小さな畑から始めようではないか! と今日も朝からえっちらおっちらと耕します。


「ねーちゃん! 水撒いて~!」


 今日も今日とて魔法の訓練に勤しむ我がお姉様。順調に武闘派に育ってます。


「あたしは忙しいの」


 つっけんどんなのはいつものこと。そして、そんな幼女を扱うのもお手の物。こんな訓練になるんだよ~と教え、ねーちゃん天才だからできるよ! と褒めたらチョロいもの。オレの夢と野望の畑に水を撒いてくれた。サンキューです。


 そんな毎日を過ごしていると、従魔にしたカラス(灰色だけど)がやって来た。


「どうした、一丸?」


 従魔にしたカラスは五匹で、一丸は町側を見張らせている。


「大人、来る。二人」


 従魔にして半年。やっとしゃべれるようになったとは言え、魔力が足りてないので見張りにしか使えないのだ。


「わかった。ありがとな。また見張っててくれ」


 臨時収入が来たので、一粒で八粒は食ったくらいのものを創り、放り投げてやる。


「カァー!」


 と喜びながら見張りへと戻っていった。


「さて。久しぶりのカモだ。しっかりいただかんとな」


 今日も今日とて魔法の訓練に勤しむねーちゃんの元へといき、カモが来たことを伝える。


「フフ。いっぱい持ってるといいな」


 なんともいい笑顔をする六歳児。これから六歳児のやることじゃないことをするのにな。


 まあ、この世は弱肉強食。狩るか狩られるかの生存競争。弱いヤツが強いヤツの糧になるのだ。


 ……なんて、前世の記憶がありチート能力があるオレが言っても説得力はないけどね……。


 ねーちゃんと二人、畑で農作業をしてる振りをしていると、なんともゲスを絵に描いたような男二人が現れた。


「へへ。結構整ってるじゃねーか。こりゃいい値で売れそうだ」


「そうだな。娼婦のガキだって言うからもっと貧弱かと思ってたぜ」


 ハイ、オレの中で一切の罪悪感はなくなりました~。いや、とっくに良心なんてないんだけどね。


 ゲスどもを油断させるためにねーちゃんに抱きつき、おっかねーとばかりに震えてみせる。ちなみにねーちゃんは怒りに震えてます。


 ……ねーちゃん、すっかり男嫌いになっちゃったな……。


 まあ、ねーちゃんの人生。百合に走ろうと独り身を貫こうと好きにしたらいいさ。思うがままに生きろだ。


 下卑た笑いをするゲスが油断しまくりで近づいて来たところでねーちゃんの水球がゲスどもの頭にドボンとな。


 日頃の成果を発揮し、ゲスどもが仲良く溺死しましたとさ。めでたしめでたしっと。


「ねーちゃんこいつ銀貨持ってた!」


「こっちはナイフを六本も持ってるよ!」


 姉妹仲良く死体漁り。大猟でい!


「このナイフ切れ味いいわね」


 ゲスの腹にナイフを突き刺す残虐幼女。無邪気である。


「ねーちゃん、刺すなら裸にしてからやってよ。服が汚れる」


 まったく、血染みは落ち難いんだから止めてくれよな。穴も開くし。


「ごめんごめん。つい嬉しくて」


 テヘヘと笑うねーちゃん。恐ろ可愛いこと。


「このナイフがあればゴブリンを殺せるかな?」


「首とか心臓を狙えば倒せるんじゃない? やってみる?」


 銀貨二枚と銅貨が三十六枚もあったし、二人の魔力(イモに換算したら八十個かな?)もいただけた。軽く十日分の余裕はできた。これならゴブリンホイホイを創れるはずだ。


「やる! いっぱい殺したい!」


 まったく、ねーちゃんは無邪気なんだから。アハハ。


「でも、今日は森ネズミを狩ってね。こっちのは投げナイフっぽいし、せっかくだから練習しとこ」


 石投げはしてたけど、ナイフは初めてだ。素早い森ネズミはいい練習台だろうよ。


「フフ。任せなさい。大っきいのを狩って来るからさ」


 と、有言実行な姉はバビュンと森へと駆けていった。


「レベルアップしたか」


 魔法はあってもレベルアップはない世界。なので、レベルアップする魔法をねーちゃんにかけたのだ。


 結構な魔力使うんじゃね?


 と思う方もいらっしゃるだろう。だが、レベルアップする力を殺した相手から奪えばいいだけのこと。簡単だろう?


 そして、死体は別の目的に使える。


 畑の横にある穴へと死体をえっちらおっちらと運び、中へとポイ。オレの野望の糧となれ~。


「うんうん。やっぱ人だと育ちがいいね~。魚じゃもののたしにもならんわ。ゲスどもに仲間がいて様子を見に来てくれるとラッキーなんだがな~」


 なんて願いが神様に届いたのか、次の日、カモさんが三人も追加されました~。


「ねーちゃん大猟だね!」


「うん! 大猟だ!」


 オレたち残虐姉妹。今日も元気に生きてま~す!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る