第5話

婆さんはその日消費したエネルギーの回復、爺さんは今夜のお出かけに備えて

タヌキシチューとウサギのテリーヌの優雅な食事を

二人で並んで黙々と食べ尽くしたそうな。

そういえば婆さんはちゃっかりお菓子の家から焼きたての白パンと

白雪姫に持って行った籠の中から普通のリンゴを持ち帰っていたから

それも一緒に完食。


   ラララ…リリリ…ルルル・・

   そうそう、その調子、だいぶ戻って来たね、もう少しだ!


爺さんが出掛けた後、そっと起き上がった婆さんは

爺さんの後ろ姿を見失わないように月あかりを頼りに付けて行ったんだ。

こんなことはお茶の子さいさいさ!


裏の丘を越え小藪を抜けて行くと小川があった。 

爺さんはそこで生えていた笹の葉を一枚もぐとあっという間に笹舟を作って

その上にヒョイと飛び乗った!

えええ!!!

爺さんは一寸法師に姿を変えてしまった!


婆さんはびっくりしたけれど、爺さんの笹舟は勢いよく下って流れていく。

慌てて同じように笹舟を作って、ままよ、と飛び乗ると、

えええ!!

婆さんは親指姫になってしまった!のだ。


何とか急流を抜けると笹舟はいつの間にか停まり、

爺さんの笹舟も空のまま止まっていた。

親指姫のドレスのまま婆さんがどんどん進んで行くと

竹林の中からにぎやかな音楽や歌声が聞こえてきた。


眩しいライトが点滅するクラブのようだ!

小さな爺さんが小さなお姉ちゃんたちに囲まれて

うれしそうにぴょんぴょん飛び跳ねている。

よく見ると沢山の動物がいる。

キツネ、ツル、カラス、ライオン、ありんこ? 

イソップ物語? ジャングルブック?


奥の方には桃太郎が遅れているお供にLINEを入れているらしい。

反対側には重い帽子のようなものをかぶった、あれは鉢担ぎ姫?


隣の半裸の色黒の男はマルキン模様の腹掛けをしている。

隣村の花咲じじいと瘤取り爺さんも楽しそうに飲み交わしている。そっくりだ!

3年寝太郎もしっかりと目を覚まして手拍子しているではないか!


踊っているのはアラビアンナイトのベリーダンサー達だ!

今は酒池肉林とまではいかないけれど、このままだったらどうなることか...

                             

                            …続く



 



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