第4話

婆さんの後はマレフィセントとかいう名前のハケンが結末をやってくれる

手筈になっているから、

グレーテルに竈の中に押し込められて焼け死ぬとか、

小人たちに追われて崖から落ちるとか、

王子様にやっつけられるとかいうことは

もう婆さんの仕事ではないそうだ。

婆さんは演技力が大事なパートだけ頼まれているらしいがね。


殺される悪い魔女ばかりやっているマレフィセントは

ストレスが溜まって来ると時にはただ働きで、

ドロシーに黄色い靴をプレゼントする南の国の魔女や

真夜中になると突然片足がブカブカになるというガラスの靴をシンデレラに履かす

しろうと受けする優しい魔女の役もするそうだよ。

彼女は靴フェチだから喜んでいるよ。

そうじゃなきゃこのハケンの仕事なかなか続かないからね。


それにおとぎ話の魔女の役はあちこちから出演依頼が多いんだよ。


若い子たちはプリンセスやら可愛いい賢い主人公、センターを取りたがるから、

ハケンのシニアに来るのはいつも

オオカミに食べられる赤ずきんちゃんのお婆さんとか、

恐ろしく怖い顔の悪い魔女役ばかり。 

それが次々と来るからいそがしいこっちゃ。

超ベテランともなるとヨダのようにゆったり動くようなことしかもうしないしね。


そうそう、今夜は冷えそうだから香草をいっぱい入れた

シチュー・ド・タヌキにしよう!


帰り道でタヌキを捕まえて帰ろう、たっぷりと仕事をして栄養補給もしたいし、と

婆さんは夕食のメニューを考えながら山道を下って行った。


蓑傘(みのかさ)着て徳利をぶる下げてフラフラ千鳥足で歩いているタヌキを

村はずれで見つけた婆さんは

甘い言葉で誘って連れ帰ったんだよ。


一方、昼寝から目覚めた爺さんは爺さんで、今日は小ウサギのテリーヌが食べたい…と思いつき、

畑の端っこでニンジンを夢中でかじっている

茶色の小ウサギの後ろに忍び寄って

パッと網をかけて捕獲しましたとさ。

     

                                  …続く


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