第7話 交代
そしてバルセロナも交代のカードを切る。
両ウイングの選手を下げて
ライオネルを左に、右には新加入のブラジルの至宝と呼ばれるシウバ。
センターにスペイン代表最多得点記録を持つウーゴを入れた。
ヨハンのきったカードはというと
今日得点をあげているゴンサロに変えて稲垣、そしてエドガーに変えてフランス代表経験もあるマルクを投入した。
『両チームとも選手交代ですね。
ここに来て新加入のシウバもピッチに入ります。
彼はブラジル代表の10番も背負い、ブラジル国内では22歳でMVPに輝いています。
そして23歳の誕生日にバルセロナと契約し、本日がバルセロナのユニフォームを着ての公式戦初戦となります。』
「彼の能力に疑いの余地はないですが、スターティングに入っていなかったのを見るに、連携がどうでしょうかね?
また、マッチアップの内川との対戦も楽しみです。
個人的にはウーゴが楽しみですね。
彼が後半途中から出てくる怖さがあります。
ワンタッチでゴールを量産するポジショニングの良さが売りですし、代表でも中盤の2人と長くやっているので阿吽の呼吸ですしね」
ヨハンはここまでの流れは読み切っていた。
そのために内川を起用したのだ。
彼はインテリジェンスの面ではあまり期待はできない。
だが、彼はとても真面目である。
彼のタスクを絞ることにより真価を発揮できるタイプであるとヨハンは感じていた。
彼には推進力もある。クロスの質は良くないがスピード自体は魅力的だ。
そして足の速さ、体力面も問題ない。
何よりもここぞという時の集中力が魅力的である。
多分その時は彼の頭の中は何も考えていないのであろう。
それにより一種のゾーンの様なものに入り、相手を封じ込めるのであろう。
なので余計な事を考えさせない様に、彼にはシンプルに伝えている。
中を切らせるな。クロスは上げさせてもいい。だが左で蹴らせろ。などである。
そして今のところ余計な負荷がかかっていないのでシウバにも対抗出来るはずだ。
彼のデータを見せて対策はさせている。
そしてライオネルはフィジカルの接触を嫌う。
そこに老獪な代表経験もある元フランス代表DFを送り込む。
彼はうまく相手の嫌がる事をする。
割とダーティーなプレイヤーだ。
単体ではライオネルには敵わないが、彼の集中力を散漫にさせるのが狙いだ。
そして稲垣。
彼は荒削りだが、直線では圧倒的なスピードを誇る。
クリアしたボールですらチャンスになり得る。前がかりになる相手へのプレッシャーを兼ねてだ。
「さてどうなるか見てみよう。」
ヨハンは顎を撫でるのであった。
ヨハンの読みはほぼほぼ当たっていた。
バルセロナの交代策は彼らに推進力をもたらしたが、最後のところで噛み合っていない。
それは連携面でもそうだが、レガレスのDFが思うようにリズムを作らせていないのも大きかった。
だがゲームの世界ではない。
ときにはミスも起きるのが現実である。
シウバは焦っていた。
ブラジル代表でも国内でもチヤホヤされた存在である彼は世界最優選手にも手が届きかけていた。
だが最後の壁が高い。
それは今チームメイトでもあるライオネルの存在であった。
代表としての親善試合で彼の凄さを改めて知った。
しかし勝ったのはシウバのいるブラジルであった。
総合力としてはブラジルの方が若干優っていて、アルゼンチンは統制が取れていなかったのであった。
そこで彼は思った、
ライオネルと共にクラブで勝利を得て、代表では自分が優位に立てば世界一の座を手に入れられるのではないかと。
そして彼から学べる事も沢山あるばすだ。
そうして世界の期待を背負ってデビューしたはずが、敗戦の危機に瀕していた。
出場した自分の価値も下がってしまうそう思ったシウバは敢えてDFが密集する中へと切り込んでいく。
彼のスキルは圧巻だった。
派手なフェイントも織り交ぜつつ、独特のリズムで交わしていく。
これはやばい!
内川が斜め後ろからボールに足を伸ばす。
そしてボールに触れた。
よしっ!!
そう思った直後
ピーーッ!
笛が鳴る。
前にはシウバか倒れている。
内川はおおよその事を理解した。
1点差で世界一のチームが負けている。
そして、世界中の注目を浴びた選手のデビュー戦。
内川は必死で気付かなかったが、審判はちょうど密集地隊ということもあり視覚になっていた。
全て計算されていたのだ。
そして審判が駆け寄り、手を胸へと持っていく。
ゆっくりとイエローカードが提示されたのであった。
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