ある贋作者の物語

今村広樹

本編

 その男の名前をリュカと言います。

 職業は筆耕かくしごとと言えば聞こえはいいですが、ようは革命が成ったあと、貴族やらなにやらになりたがった方々の家系図作りでした。

 しかし、リュカはこう考えました。

『こういう一回で終るやつじゃなくて、に金をむしれないかニャ?』

 そういった訳で彼はゼリホン氏を訪問しました。

 ゼリホン氏は今日ではマイクロヴァースの発見者として知られる科学者です。量子空間について説明する場ではないので、まあ画期的な発見をした方だと考えてください。彼は一方で、古文書マニアとして知られていました。

 リュカはこう言いました。革命から逃げようとしたさる貴族がその家が持っていた資産や史料ごと海の藻屑となったのだが、それを発見したので見てもらいたいと。

 ゼリホンはリュカが持ってきた手紙を読んで興奮しました。これは良いものだと。

 誰でもわかる話ですが、それはリュカのェイでした。一例をあげればわかると思うので、あげましょう。

『HEY、マザー、聖人なんだけど、ここはいいとこだぜ、イエーイ』

 そんなわけで、逮捕されて3年ほど牢屋にいたリュカですが、その後の足取りはわかりません。多分もっと巧くやったのでしょう。


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ある贋作者の物語 今村広樹 @yono

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