にゅうめんマン最大の敵(6)
「――はっ。いかんいかん。あまりにすごい小説のアイデアを聞かされたせいで、宿敵との戦闘中であることを忘れるところだった」
にゅうめんマンの話術に幻惑されていた多麻林は我に返った。にゅうめんマンはこの策略によって時間を稼ぎ、体勢を立て直すことができた。
「この俺をごまかすとは、なかなかやるじゃないか」
多麻林は言った。
「場数が違うぜ。今度はこちらからいくぞ。てやっ!」
にゅうめんマンは多麻林にお返しのパンチを放った。
「ぐっ!」
これはうまい具合に多麻林の胸にヒットし、多麻林は短いうめき声をもらした。だが、あまり攻撃がきいているようでもなかった。
「他の坊主たちから『無敵の強さ』だと聞いていたが、にゅうめんマンの攻撃も大したことはないな。さっき受けたパンチの方がよっぽど痛かったぞ」
普通の人間なら間違いなくノックアウトされているところだが、多麻林は、負の感情を源とする暗黒の霊力によって打たれ強くなっているのだ。多少手加減して殴ったとはいえ、驚くべきタフさである。
「次はこっちの番だ!ひやむぎパンチ!!」
負けじとばかりに多麻林も強烈なパンチを繰り出した。こちらも相手の胸にヒットし、にゅうめんマンはその衝撃で後ろへよろめいたが、どうにか転倒せずに踏みとどまった。
《くっ。こいつはなかなか手強いぞ……》
実際、多麻林はにゅうめんマンが予期していたよりもずっと強かった。「巨大なヒアムギティを持っているとはいえ所詮相手はひやむぎ。俺の敵ではない」と思い上がっていた自分の心を、にゅうめんマンは反省した。
「戦闘中に何をぼんやりしているんだ?にゅうめんが好きなやつらはきっと、お前みたいにぼんやりしたやつばっかりなんだろうな!」
と悪態をつきながら、多麻林は敵の顔に向かって再びパンチを放った。にゅうめんマンを両腕でこれをガードしたが、多麻林がすかさず次のパンチを胴体に打ち込んだので、それをよけることができず、攻撃を受けて地面に尻もちをついた。
「これで分かっただろう、ひやむぎとにゅうめんの実力の違いが。今後は自分の卑しい身分をわきまえ、スーパーマーケットでひやむぎを見かける度に45°の角度で頭を下げて深く敬意を表すがいい」
だが、多麻林の横柄な態度に対し、尻もちをついたままゅうめんマンは言い返した。
「ひやむぎに下げる頭などない。まだ戦いは始まったばかりだというのに、まさかもう勝ったつもりでいるんじゃないだろうな」
にゅうめんマンはおもむろに立ち上がった。
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