にゅうめんマン最大の敵(5)
「そうだな。それでは教えてもらうおうか。ネット小説の読者を増やす方法とやらを」
多麻林はにゅうめんマンに問うた。
「にゅうめんをテーマにした小説を書くことだ!」
にゅうめんマンは自信満々で答えた。だが、多麻林の反応は今ひとつだった。
「そんな変なテーマで書いたら、それこそ誰も来ないのでは?にゅうめんなんか、料理マンガにだって多分ほとんど出て来ないだろ」
「俺のアドバイスが信用できないと?」
「ありていに言えば。読者を集めるには、もっとはやりのテーマでないとタメだ」
「例えば?」
「そうだな……魔法少女とか」
「魔法少女っていうと、マンガでたとえたら『魔法使いサリー』みたいなやつか」
「例が古いな。もうちょっと新しいやつを手本にした方がいい」
「じゃあ『エスパー魔美』とか」
「それも古いな。せめて作者がまだ生きてる作品を選んだらどうだ。というか『エスパー魔美』はエスパーであって魔法少女ではないだろ」
「それじゃあ、どんな作品を手本にするべきなのか言ってみてくれ」
「『新本格魔法少女りすか』なんかどうだ」
「なるほど。俺はそれを知らないが、ともかく、なかなか詳しいみたいじゃないか――でも、その作品がはやってるのは本当だと思うけど、何かもの足りないんだよな」
「何がもの足りないんだ」
「そうだな――」
にゅうめんマンは魔法少女について少し考え、そして言った。
「分かったぞ。大量の読者を獲得できる、最高の小説のレシピが」
「お。言ってみろ」
「魔法少女が世界最高のにゅうめんを求めて各地を放浪する話だ」
「魔法少女がにゅうめんを求めて放浪の旅だと……?」
相変わらずにゅうめんにこだわるにゅうめんマンだったが、このアイデアは多麻林の心に響いた。
「……いける。そのアイデアはいけるぞ」
「だろう?主人公の魔法少女は、伝説のにゅうめん職人だった亡き父の遺志を継いで、世界最高のにゅうめんを探し求めるんだ」
「すばらしい設定だ。書籍化が見えてきた!」
「そんでもって、その魔法少女には、ひそかに心に想う青年魔法使いがいる。でも、その青年は、世界最高のにゅうめんを独り占めしようともくろむ魔王から魔法少女を守るために、自らの命を犠牲にするんだ」
「見えてきた!……直木賞が見えてきた!!」
「愛する青年の死によって魔法少女は自暴自棄になり、にゅうめんの探求をあきらめそうになる。でも、あの世から届いた『世界最高のにゅうめんを手に入れる夢をあきらめるな』という亡き父と青年魔法使いのメッセージにふれて、再びにゅうめんを探し始める」
「ノーベル文学賞が見えてきたぁぁぁーーっ!!!」
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