にゅうめんマン最大の敵(4)
パンチを受け止めることはできたものの、その威力は強烈で、にゅうめんマンの手はしびれた。ラゴラ教徒である多麻林には負の感情を力に変える能力があるので、心に悲しみや憎しみがあると攻撃力が高まるのだ。
感情が高ぶってきた多麻林は、相手を攻撃する手を休めず、日頃感じている悲しみをはき出しながら、にゅうめんマンに向かって、次々に猛烈な打撃を繰り出した。にゅうめんマンは必死でそれをかわした。
「『うどん』なのか『そうめん』なのか、どっちかはっきりしろと言われ続ける、ひやむぎの気持ちがお前に分かるか!」
「どっちでもいいだろ、そんなの!」
「ひやむぎは都道府県にたとえたら福井県級の影の薄さだと!近畿地方か中部地方か分からない中途半端さまでそっくりだと!?そんなことを言うやつは北陸の雪に埋もれて死ね!!」
「誰が言ったんだよ!福井県に謝れ!」
「ひやむぎの名前の意味がわからないだと?それじゃあお前は『うどん』や『きしめん』の意味は分かるのか、この野郎ぉぉーーっ!!」
「そんなこと俺が知るか!」
「お前なんかに……お前なんかに……がんばって10万文字以上もネット小説を書いたのに、ほとんど読んでもらえず、1週間続けて1人も閲覧者がいなかったりする底辺ネット小説書きの、この俺の気持ちが分かってたまるかああぁぁぁぁぁ!!!!!」
もはやひやむぎとの関係さえなくなった、なりふりかまわない悲しみを拳にこめて、多麻林は猛烈なパンチをにゅうめんマンに叩き込んだ。そのあまりのスピード、威力ににゅうめんマンは対処できず、胸に直撃を受けて、地面にぶっ倒れた。
「……はぁはぁ……思い知ったか、こんちくしょう」
地面に横たわるにゅうめんマンを見下ろして、多麻林は言った。
「……今のはきいたぜ」
起き上がる元気もなかったものの、強がりをこめてにゅうめんマンは答えた。
「それにしても、お前ネット小説を書いているのか」
「ああ」
「1週間1人も閲覧者がいなかったりするのか」
「ああ」
「ひどいな」
多麻林はにゅうめんマンを蹴っ飛ばした。
「ぐはぁっ!」
それから多麻林がもう一発蹴飛ばそうとすると、にゅうめんマンが慌てて制止した。
「待て!人をサッカーボールみたいにポンポン蹴るんじゃない。ネット小説の読者を増やす方法を俺が今から伝授するから、まずは落ち着くんだ」
「読者を増やす方法?」
「そうだ。気になるだろ」
(著者注:このエピソードはフィクションです。『シャカムニの使者☆にゅうめんマン』の作者は偶然にも多麻林と同様の境遇にありますが、割と楽しくネット小説を書いているので、ご安心ください。)
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