にゅうめんマン最大の敵(2)
「ヒアムギティか。どうりで――」
にゅうめんマンもヒアムギティのことは知っていた。冷たい麦茶みたいな名前だが、その実体は、ひやむぎに高濃度に含まれる、ある種の特別なエネルギーだ。ひやむぎの外部にも微量に存在し、人間の中にはまれに、大量のヒアムギティを体内に蓄えている者がいる。多麻林はそうした人間の1人なのだ。
「君が類まれなるヒアムギティの持ち主だということは分かったが、今日のところは黙ってここを通してくれないか。管長と大事な話があるんだ」
にゅうめんマンは頼んだ。だが多麻林は言下に拒否した。
「断る」
「なぜだ」
「お前には深い恨みがある。俺は、にゅうめんマンに復讐するためだけに今日まで生きてきた。そのためにホーネット師匠の下で修行し、お前を抹殺するための力を身につけたんだ。死んでも協力はしない」
「お前みたいな奴見たこともないぞ。なんでそんなふうに恨まれないといけないんだ」
「とぼけるな!俺が心から愛する食べ物、ひやむぎを侮辱(ぶじょく)したこと、忘れたとは言わさんぞ」
「言いがかりだ」
「俺は、お前がうちの根子丹師匠と戦ったときにその場にいた坊主の1人だ」
「根子丹とは懐かしい名前だな。だけど、それがどうしたっていうんだ」
「あのとき『ひやむぎみたいな、うどんなのかそうめんなのかよく分からんマイナーめん類と一緒にするな』と言っただろ」
「そんなこと知らない」
「あくまでしらばっくれる気か。ならばこれを読んでみろ!」
多麻林はふところから愛蔵版『シャカムニの使者☆にゅうめんマン』を取り出し、にゅうめんマンに手渡した。
「第8話『にゅうめんマン vs 悪の教団幹部(6)』の真ん中らへんだ」
にゅうめんマンは第8話の真ん中らへんを確かめた。
「本当だ。確かにそう言ってる……」
「どうだ。自分のおかした罪が分かったか」
「分かったけど、それにしたって人を恨む理由がくだらなすぎる。ひやむぎくらい何だ。そんなことで他人に復讐するためだけに今日まで生きてきたなんて、俺には理解できない」
「また、ひやむぎを侮辱したな!もう本気で怒ったぞ!!うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
怒り心頭に発した多麻林は天に向かって悪魔のような雄たけびを上げた。にゅうめんマンに対する激しい憎しみが、東京の飯屋で出て来るうどんの汁のようにどす黒い暗黒のエネルギーとなって多麻林の体から湧き上がり、同じく多麻林の発する巨大なヒアムギティと混じり合い、いわく言いがたい不気味なオーラとなって太陽の光をさえぎり、まがまがしく辺りを渦巻いた。
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