にゅうめん乱用防止キャンペーン(12)
にゅうめんマンが想像以上に強情だったので、ホーネットは怒る以上にあきれてしまった。
「どんな恐ろしい目にあうかも分からないのに、そんなふうに抵抗して何の意味がある。法律でにゅうめんを禁止したのが余程不満らしいな」
「もちろんだ。もう1つ言えば、お前たちには三輪さんを奪われた因縁もある」
「まだそんな事を言っているのか。あの女がそんなに大事か」
「そうだ」
「いずれにしても、私たちが奪ったなどというのは筋違いだ。三輪素子は自分の意志でここへ来た」
「お前たちが何か仕組んだんだろ。そうでなければ、三輪さんがこんな悪の組織を認めるはずがない」
「買いかぶっているんじゃないのか。どうせ大した女ではあるまい」
「何だと!」
にゅうめんマンは腹を立てた勢いで起き上がろうとしたが、ホーネットに警棒で頭をしたたかに打たれた。
「勝手に動くな」
「うぐぐぐ……」
にゅうめんマンは再び痛みに顔をしかめた。だが、圧倒的ピンチにあっても口は達者で、苦痛が落ち着くやいやなホーネットに言い返した。
「それ以上三輪さんのことを悪く言ってみろ。誰だろうと容赦しないぞ。あんな立派な人が他にいるもんか」
「あいつがそれほど立派な人間だとは思わんな」
「お前は三輪さんをよく知らないからそんなことを言うんだ。俺はいつだって、今でも、三輪さんを信用しているし、あの人のためなら死んでもいいと思っているんだからな!」
「――お前ほど強情で、思い込みの激しい男も他にいないだろうな」
ここで、ホーネットは何を思ったのか、舞台の袖から様子を見ていた音楽ホールのスタッフたちに呼ばわった。
「ライブは中止だ」
スタッフたちは意外そうな顔をした。にゅうめんマンをやっつけたのでイベントを再開すると思っていたのだ。スタッフのうちの数人が、恐る恐るホーネットたちの所へ出て来てたずねた。
「中止するんですか。ライブを続けるためにこの男と戦ったんでしょう?せっかく手強い相手に勝ったのに」
「本当にそう思うか」
「違うんですか」
「にゅうめんマンは私の警棒しかねらわなかっただろう。私自身には一度も攻撃していない」
「偶然では?」
「そんなはずはない。たとえば、私が転んだときに、警棒ではなく私の体を蹴飛ばすことだってできたんだ。今となっては何でもかまわないが、私が勝負に勝ったとはとても言えない」
「にゅうめんマンは何のためにそんなことを」
「気になるなら本人にきけばいい。――気取った男だ」
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