にゅうめん乱用防止キャンペーン(11)

《このままではらちが明かない。1つ勝負に出よう》

 にゅうめんマンはそう決心し、ホーネットの警棒をねらって思い切った攻撃に出た。


「にゅうめんスラッシュ!」

 にゅうめんとは特に関係がないこの攻撃は、名前は今ひとつだが威力は確かであって、警棒でこれを受けたホーネットは、うまく受け流し損ねて動きがにぶった。にゅうめんマンは自慢のスピードと怪力を込めて、相手の警棒にもう一発攻撃を入れた。


「にゅうめんスラッシュ Part 2!!」

 強大な破壊力を持つこの技により、にゅうめんマンはホーネットの手から警棒をたたき落とした。


《よし!》

 相手が再びそれを拾い上げないよう、にゅうめんマンは床に落ちた警棒に意識を向けた。だがその瞬間、ホーネットは落とした武器を無視して、猛烈な素早さで、にゅうめんマンに不意打ちのハイキックを放った。

《なに!》

 と、にゅうめんマンが驚くのが早いか、グレーのタイツをはいたホーネットの足が、にゅうめんマンの肩を直撃した。


「ぐっ」

 蹴りはかなりの威力だったが決定的ではなく、にゅうめんマンは、よろめきつつもギリギリ踏みとどまった。だが、またしても目にも止まらぬ敏捷(びんしょう)な動きでホーネットは敵の懐(ふところ)に潜り込み、ありったけの力と霊力を込めて、突き刺すようなボディアッパーを、にゅうめんマンのみぞおちにたたき込んだ。


これをまともに受けたにゅうめんマンは、後方へ殴り飛ばされるように仰向けに転倒し、木製の床に頭を強打した。人並み外れて丈夫な体を持つにゅうめんマンもこれにはたえられず、身動きする気力を失なって、音楽ホールのステージ上に横たわった。意識を失わなかっただけでも大したものだと言えるかもしれない。


ホーネットは自分と相手が床に落とした2本の警棒を拾い上げ、そのうち1本を、床に倒れているにゅうめんマンの鼻先に突きつけた。

「ここまでだな。にゅうめんマン」

「……」

 体を殴られ頭を打った衝撃で、にゅうめんマンはすぐには返事ができなかった。ホーネットは続けてにゅうめんマンに言った。

「これでこりただろう。これ以上痛い目にあいたくなければ、すぐに六地蔵の敷地から出て行け。言うとおりにしないと、ただではおかないぞ」


「…………断る」

 苦しみをこらえながら、しゃがれた声でにゅうめんマンは答えた。

「何だと?」

「断ると言ったんだ。……俺は善良な人たちからにゅうめんを取り上げる悪人どもを認めない。ただではおかないというなら、煮るなり焼くなり好きにしろ」

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