にゅうめん乱用防止キャンペーン(10)

ホーネットは2本目の伸縮式警棒をなれた手付きで長く伸ばして手に構(かま)えた。にゅうめんマンも自分の手に持っていた警棒を何となく構えたので、思いがけず、2人の剣士がにらみ合うような格好になった。


「1つきいてもいいか」

 にゅうめんマンはたずねた。

「何だ」

「さっき俺が警棒を握ったときに受けた電気ショックみたいな衝撃。あれは何だ」

「敵にそんなことをきくのか。……まあいい。教えてやろう。この警棒は霊力に反応する特別製だ。あのときお前は、私が警棒に注ぎ込んだ霊力を受けたんだ」

「なるほど」


興味深い。

《俺にもできないだろうか》

 とにゅうめんマンは考えた。そこで、手に握っている警棒に、自分の持つニューメニティを注ぎ込んでみた。すると、どうだろう。にゅうめんマンが送り込んだニューメニティが警棒全体から激しく発散し、辺り一帯に濃厚なニューメニティが満ち満ちた。にゅうめんマンはその様子を見て、いたく満足した。それは、高くそそり立つ熱帯の巨大花、スマトラオオコンニャクの花が、1km以上先まで届くという圧倒的なにおいを放つがごとき、荘厳な様相だった。ホーネットと観客たちはその様子をいぶかしく見つめた。


「茶番は終わりだ」

 警棒で遊んでいるにゅうめんマンをホーネットが攻撃した。にゅうめんマンは自分の持っている警棒で相手の警棒を防いだ。ホーネットはもう一度警棒を振るったが、にゅうめんマンは再びこれを受け止めた。


今は敵も武器を持っているので、ホーネットの動きはそれまでよりも慎重になったようだった。にゅうめんマンは警棒などさわったこともなかったが、運動神経が抜群にいいので、それなりに使いこなすことができた。ただし、この武器の扱いにはホーネットの方がはるかに慣れているので、にゅうめんマンが不利ではあるかもしれない。にゅうめんマンは神経を集中して相手の動きを捉え、防戦したが、ホーネットの動きはべらぼうに速く、にゅうめんマンのすぐれた動体視力をもってしても、ずっと防御し続けるのは難しそうだった。


相手の警棒を狙って、にゅうめんは自分からも攻撃を仕かけたが、防がれてしまった。そこで、もっと強い力を込め、2、3回続けて攻撃してみたが、こちらの力を受け流すようにして、みんな、たくみにさばかれてしまった。


ただし、今のところは、ホーネットの攻撃もすべてにゅうめんマンに防がれていた。そうして、両者敵の動きを注意深く見極めながら時折攻撃を繰り出し、2本の警棒がぶつかり合う小気味よい音と、にゅうめんマンの足音だけが大きなホールに響いた。ホーネットはこの時点でくつを脱いでいたので、ほとんど足音はしなかった。観客たちから見ると、なかなかに緊迫した、見ごたえのある戦いだった。

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