にゅうめん乱用防止キャンペーン(8)

強烈な攻撃をかわしたと思ったのも束の間、間髪を入れずに、ホーネットは再びにゅうめんマンに襲いかかった。


「でええぇい!!!」

 裂帛(れっぱく)のかけ声とともに、前の一撃を上回るすさまじい攻撃をホーネットは繰り出した。にゅうめんマンはこれも何とかよけたが、見た目からは想像もできないホーネットの恐ろしい迫力に冷や汗をかいた。

《万一もろに攻撃を受けたら、ちょっと痛いくらいではすまないだろうな……》

 にゅうめんマンは思った。仮にこのような人と夫婦げんかでもしようものなら、多分次の朝日はおがめまい。……まあ、どうでもいいことだが。


ホーネットはその後も手を休めず、続けざまににゅうめんマンを攻め立てた。にゅうめんマンは、いつもどおり後ろによけたり、ときどき横にもよけてみたり、壁際に追い詰められたら、敵の頭越しに得意の大ジャンプをしたりして、どうにかホーネットの猛攻をしのいだ。だが、このまま逃げていてはジリ貧だ。


そこで、とりあえず敵の武器を何とかすることを考えた。あのおっかない警棒さえなくなれば、この戦いは一気にイージーモードになる。にゅうめんマンは相手を圧倒し、あらゆる事がうまくいき、人生はバラ色になるはずだ。頼みの武器を奪われたら、敵もそれ以上の抵抗をあきらめるだろう(多分)。


にゅうめんマンはステージの床に放置してあったマイクを見てある事を思いつき、それを拾い上げた。それからホーネットに向かってこれを投げる素振りをした。相手はそれを見て素早く身構えた。さすがに隙のない身のこなしだ。だが、これはにゅうめんマンの仕掛けたフェイントだったのだ。


投げると見せかけて相手を油断させておき、にゅうめんマンはマイクに向かって大声で叫んだ。

「ファドゥーツ!!」


思惑通りマイクはオンのままになっていたので、それまで静かだったホールに突然、おぞましい大音響が炸裂した。効果はてきめんで、巻き添えをくらった観客たちの多くはショックを受けて腰を抜かした。同じく無防備だったホーネットもひるまずにはいられなかった。


「今だ!」

にゅうめんマンはホーネットの持っていた警棒にパッと飛びつき、敵の手からもぎ取ろうとした。だがその瞬間、我に返ったホーネットが警棒に暗黒の霊力を送り込んだ。警棒は霊力に反応して怪しく輝き、それを握るにゅうめんマンの手に、電気ショックに似た強い衝撃を与えた。


「ぐぁっ」

にゅうめんマンは警棒から手を離した。

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