にゅうめん乱用防止キャンペーン(7)
「お前が俺の相手を?その格好で?」
にゅうめんマンは、シフォン生地のブラウスとスカートをまとったホーネットの姿を見た。あまり動きやすそうには見えない。ただし一応タイツをはいているので、残念ながら、動き回ってスカートがめくれても問題がなさそうではある。
「この服は案外動きやすい。邪魔者をこらしめるのに問題はない」
「そう?」
「だが、できれば無用な争いはしたくない。すでにこちらは散々業務を妨害をされたわけだが、もしこのまま立ち去るなら、今日は大目に見てやろう」
「そう言われて、俺が黙って出て行くと思ったのか。アイドル気取りかしらないが、にゅうめんに害をなすイベントを放っておくわけにはいかない」
「これは上司の指示でやっているだけだ」
ホーネットは、管長の指示により「にゅうめん乱用防止キャンペーン」を行いつつ、必要に応じてその他の業務もこなし、なおかつ、にゅうめんマンとの戦いに備えて弟子の坊主である多麻林ともども武芸の鍛錬を積むという、多忙な生活を送っていた。(多麻林については、第68話「にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(21)」を読んでください。)もっとも、それはにゅうめんマンの知ったことではない。
「誰の指示だっていい。俺の目の黒いうちは、二度とこんなライブを開催させるものか」
にゅうめんマンは言った。
「そうか。ならば仕方がない」
そう言うと、ホーネットは舞台の袖に引っ込み、伸縮式の警棒を手に携えてすぐに戻って来た。そして、にゅうめんマンの目の前でそれを伸ばした。特別製なのか、普通の伸縮式警棒より長くて、80cmくらいありそうだった。飛び道具とか刃物でなかったのは幸いだが、武器まで持ち出したところを見ると、いよいよ本気でにゅうめんマンと戦うつもりらしい。にゅうめんマンは内心、ホーネットの持つ強大なニューメニティに少しびびっていた。ただ者でないことは間違いないが、果たしてどれほど強いのだろうか。
相手のリーチに入ることを避けるため、にゅうめんマンはホーネットとの間に何メートルか間合いを取り、動きやすいように羽織っていたジャケットを脱ぎ捨て、いつも敵と戦うときのダサい格好になった。ホーネットも動きやすいよう靴だけは脱いだ。それから2人は相手の出方をうかがってしばし向かい合った。観客たちも今や話すのをやめ、かたずを呑んで2人の様子を見守っていた。中には、これを一種の余興と思っていた者もいたかもしれないが。
やがて、ホーネットが先に攻撃を仕掛けた。ホーネットは素早く敵へ駆け寄って勢いよく警棒を振り下ろした。にゅうめんマンは持ち前の動体視力と運動神経を発揮し、とっさに飛びすさってかわしたが、空を切った警棒の勢いを見れば、油断できる相手でないことは明らかだった。
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