にゅうめん乱用防止キャンペーン(6)
残念ながら、そう言われても観客たちは納得できなかったようで、他の1人が怒りに任せてにゅうめんマンにどなった。
「正義の味方だか何だか知らないが、ライブの邪魔をするんじゃない!」
にゅうめんマンはどなり返したりせず、諭(さと)すように、これに答えた。
「いいか。よく聞いてくれ。確かに、君たちにとってはこのライブが楽しいのかもしれない。でも、このイベントに参加することによって君たちは、自分がにゅうめんを食べる権利を否定しているんだ。――今まで自由に食べられていたにゅうめんが法律で禁止されて、本当は困ってるんだろ?」
「確かにちょっとだけ困るけど、食べられなくても何とかなるぞ!せいぜい年に2、3回食べる程度の料理じゃないか」
「年に2、3回しかにゅうめんを食べない君は明らかな例外だ。自分にしか当てはまらない基準をみんなに押しつけてはいけない」
「そうかなぁ……」
こうして、にゅうめんマンは反抗的な観客を1人論破したが、また別の男が野次を飛ばした。
「いい加減にしろ覆面野郎!!俺たちはホーネットちゃんの歌を聴きに来たんだ!とっとと失せろ!」
「冷静に考えろ!お前ら、にゅうめんとアイドルと一体どっちが大事なんだ!」
「アイドルに決まってるだろ!分かり切ったことをきくな、バカ!!」
「バカと言う方がバカだ!このアンポンアンのオタンチンのオタンコナスのスットコドッコイ!」
にゅうめんマンは高度な語彙力(ごいりょく)を駆使して、野次を飛ばす観客との舌戦を繰り広げた。
そんなやり取りを行ううち、観客たちの忍耐力はすぐに限界に達した。そして、大勢でステージに乗り込み、先ほどライブスタッフがやったのを同じように、力ずくでにゅうめんマンを排除しようとした。
「待て」
暴力的な衝突が起ころうとするそのとき、それを制止したのはホーネットの一声だった。――きれいな服に実を包み、さっきまで「ダメ。ゼッタイ♡」とか言って歌っていたホーネットの迫力に驚きつつ、ファンたちは、いく分控えめに抗議した。
「でも、俺たちホーネットさんの歌が聞きたいんです。楽しみにしていたライブをこんなふうにむちゃくちゃにされて、黙っていられませんよ」
「そう言ってもらえるのはありがたいが、ともかく力ずくでこの男を排除しようとしても無駄だ。見た目からは分からないがとても強い。普通の人間では何人集まってもかなわないだろう。痛い目にあうだけだ」
だが、そう言われてもファンたちの不満が収まらなかったのは、仕方のないことだろう。
「それじゃあライブが妨害されるのを、指をくわえて見ていろって言うんですか」
「そうよ。こういう言い方をするのはやらしいけど、私たちお金を払って聴きに来てるんだから」
文句を言う観客たちにホーネットは言った。
「分かっている。だから私がにゅうめんマンの相手をしよう」
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