にゅうめん乱用防止キャンペーン(5)

見かねたにゅうめんマンは、エキサイトしている観客たちを強引に押し分けてステージに乗り込み、パフォーマンスを行っているホーネットの手からマイクを引ったくった。ホーネットは思いがけない出来事に驚き、観客たちも唖然(あぜん)となった。録音された伴奏だけが、歌い手を失って白々しく流れ続けた。


だが、自分の行いによって何千の人間が白けようとも、正義の味方はひるみはしない。マイクを握ったにゅうめんマンはステージ上で観客席の方へ向き直り、人々に訴えた。


「みんな目を覚ませ!このライブが、このキャンペーンが、どういうものか分かっているのか。俺たちに必要なものは、こんなふざけた音楽じゃない。誰もが自由ににゅうめんを食べることのできる社会なんだ!」


流れ続けていた伴奏がやんだ。裏方のスタッフが止めただろう。ホールに集まった数千人の観客に絶望的な沈黙が降りかかった。にゅうめんマンはこれを、自分の言葉が聴衆に与えた深い感動によるものと解釈した。


だが、ここで邪魔(じゃま)が入った。舞台の袖からスタッフが出て来て、にゅうめんマンに抗議したのだ。

「あんた!いきなり歌手からマイクを奪い取ったあげく意味不明な演説をして、一体どういうつもりだ!」

「どうもこうも、こんなライブを見逃しておけるか。このイベントはもうおしまいだ」

「勝手に終わらすなこの野郎!」


スタッフはマイクを奪い返そうとしたが、にゅうめんマンはそれを手放さなかった。それで他のスタッフたちも一緒になって、にゅうめんマンからマイクを取り上げようとしたが、やはり失敗した。


「ええい、ちょこざいな!こうなったら力ずくで排除だ」

 ついにスタッフたちは数人がかりでにゅうめんマンに襲いかかったが、まったく相手にならなかった。


「悪に手を貸す不届き者どもめ!」

 と言って、にゅうめんマンは片手でマイクを握ったまま、もう片方の手で、自分に飛びかかるスタッフたちを1人ずつ客席の方へ投げ飛ばした。そうして全員を始末してから演説を再開しようとしたら、とうとうそばにいた観客が野次を飛ばした。

「誰だお前は!!ライブの邪魔をするんじゃない!」


 にゅうめんマンはマイクを通してそれに答えた。

「俺は正義の味方にゅうめんマン。おろかなる人間たちからにゅうめんを守るために地上へつかわされた、シャカムニの使者☆にゅうめんマンだ!」

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