にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(21)
にゅうめんマンが立ち去ったという知らせを聞いてホーネットは一息ついた。大きな騒ぎだったが、物的な被害がほとんどなかったのは幸いだ。人的被害(=にゅうめんマンによる坊主たちへの攻撃)はそこそこ大きかったが、命にかかわるほどの怪我を負った者はいない。
ちなみに一番大きな怪我をしたのは、にゅうめんマンにやられた坊主や警備員ではなく、空中部隊が落とした小石に当たった坊主だった。いずれにしても、ここの坊主たちは異常に元気な者が多いので心配することはないだろう。
敷地内を一通り見回って部下に指示を出したホーネットは、副管長室に戻ってからこんなことを考えた。
《今回は重大な被害がなかったが、いずれまた、にゅうめんマンと衝突することがないとも限らない。いや、そうなる気がする。管長はにゅうめんマンのことに関しては何も心配していないようだが、ここは私が対策を講じておくべきだろう。まずは私自身が、新しく手に入れたラゴラ教の力をきたえておくことだ。あいにく私は女だが、この力に磨きをかければ、乱闘や取っ組み合いになっても簡単にやられたりはしないはずだ。現にラゴラ教の継承者であるうちの管長は相当な手練(てだれ)だしな》
しかし、ホーネットはそれだけでは満足しなかった。
《できれば、もう少し守りを厚くしておきたい。どうするのがいいだろう――》
ホーネットはいすから立ち上がり、戸棚から茶筒と急須と湯呑みを取り出して、ポットの湯で茶をいれた。副管長として優遇されているのかどうかしらないが、ここに置いてある緑茶はかなりうまい。
茶をすすりつつ、しばらく考えていると、1つのアイデアが頭に浮かんだ。管長の許可を得ることが前提だが、自分自身がラゴラ教の弟子をとって、対にゅうめんマン用に訓練するのだ。いや、自分も新人であることを考えると、一緒に訓練するというという方が正しいかもしれない。ともかく、そのためには適した人材を見つける必要がある。ラゴラ教徒は負の感情を力に変えるから、にゅうめんマンと戦うためには、できる限り大きなマイナスの感情を心に抱えている者がいい。
* * *
後日、自分自身の弟子をとりたいというホーネットの申し出は、管長からあっさり許可された。あんまりあっさりしていたので拍子抜けしたほどだ。
ホーネットは、大きな負の感情を持つことを基準に、弟子にする人材探しを始めた。すると予期した以上の逸材(いつざい)が見つかった。副管長がにゅうめんマンと戦う人材を探しているという話を聞きつけ、宗教法人六地蔵の多麻林という坊主が自ら名乗り出たのだ。具合のいいことに、多麻林はにゅうめんマン個人に対して途方もない敵意を抱いていた。
「にゅうめんマンを倒すための人材を探しているとお聞きました。その役目、どうか俺にやらせてください。――俺は、にゅうめんマンのことだけは死んでも許せないんです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます