にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(19)

「しらばっくれるな。お前たちが三輪さんの失踪に関係していることは分かっているんだ。どうしても白を切るというならこちらにも考えがあるぞ」

「どうするつもりだ」

「この敷地内の建物をみんなめちゃめちゃに壊す。更地になるまで徹底的に壊して、がれきを取り除いて、地面を耕して、小麦畑を作って、にゅうめんの原材料を収穫してやるからな。本気だぞ。俺は三輪さんを助け出すまで絶対に手を引かない。覚悟しておけよ」

 正義のヒーローらしからぬギラギラした目つきでにゅうめんマンは言った。言っていることはめちゃくちゃだが、本当に建物を壊されたら困るので副管長は思案した。


「分かった。私たちが三輪素子の居所を知っていることは認める。だが、お前はこの女をつれて帰ることはできない。なぜなら、三輪素子は自分の意志で行方をくらましたのだし、元の場所に帰るつもりもないからだ」

「それもうそじゃないのか。三輪さんが自分の意志で失踪するとは考えにくい。本当ならば証拠を見せてくれ」

「証拠か――」


副管長は再び思案し始めたが、やがて考えがまとまったらしく、にゅうめんマンに言った。

「ここと同じ階にある寺務室へ行って、三輪素子と電話で話がしたいと寺務員に言ってくれ。副管長の私が許可したと伝えれば通話させてもらえるはずだ」

「本当か。何か話が簡単すぎるんじゃないか」

「本当だ」

「わざわざ寺務室へ行かなくても、ここから三輪さんにかけることはできないのか」

 目の前の机に置いてある電話を示しながら、にゅうめんマンは尋ねた。

「三輪素子のことは私の管轄(かんかつ)ではないから、一応寺務を通してもらう必要がある」

「管轄ねえ……」

 にゅうめんマンは半信半疑だった。

「そんなことを言って俺をだまして、変な罠(わな)にかけたりするつもりじゃないだろうな」

「疑り深い男だ。うそではない」

「いいだろう。寺務室へ行って確かめてみることにする」

 

にゅうめんマンはソファから立ち上がり

「それじゃあ失礼するよ」

 と部屋を出て行った。これを見届けてから副管長は寺務室に内線をかけた。

「もしもし。副管長のホーネットだ。今から、覆面をかぶった、にゅうめんマンという男が寺務室へ行って、三輪素子という人物と電話がしたいと頼むはずだから、そしたら、外部へ電話をかけるふりをして副管長室に内線をかけてくれ。もし何か詮索(せんさく)されたら、そちらで分からないことは話さずに副管長室へ来てもらってくれ。私が対応するから。……それでは頼んだぞ」

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