にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(18)

六地蔵ファイブをやっつけたにゅうめんマンは管長室の扉をノックした。だが、少し待っても応答がない。それでもう一度ノックしたが、やはり反応はなかった。

《仕方ない。勝手に入らせてもらおう》

扉のノブに手をかけて回そうとすると、鍵がかかっているらしく、ガチャガチャいじっても扉は開かなかった。留守なのだろうか。この扉をブロックしていた六地蔵ファイブと痛い思いをして戦ったのは、残念ながらすべて無駄だったようだ。


どうしようかと、にゅうめんマンが考えていると、仮面を身に着けた女が廊下をこちらへ歩いて来て、声をかけた。

「管長はいない。今日は出かけているからな」

「なるほど。それで鍵がかかっているのか――じゃあ副管長室を当たってみようかな」

 管長室のそばに副管長室があることは、先ほど部屋の配置図を見たときに確認済みだ。

「副管長室も空だぞ」

 女は言った。

「そうなのか」

「ああ。私が副管長だからな」


「そうか。ひょっとしたら、そうじゃないかと思ったんだ」

 にゅうめんマンは言った。

「なぜ」

「お前ほどの巨大なニューメニティの持ち主が、ただの信者や用務員であるわけがない。副管長どころか、組織を操る黒幕だと言われたって俺は信じただろう」

 仮面の女からは、これまでの敵とは比較にならない強さのニューメニティがにじみ出ていた。それにしても、何という暗く重々しいニューメニティだろうか。にゅうめんマンのものとはかなり性質が異なるようだ。


「何のことかよく分からないが、ともかく私に用があるというなら話を聞こう」

「ありがたい。けんかっ早い変人ばっかりの組織の副管長にしては話が分かるじゃないか」

 自分のことを棚に上げて、にゅうめんマンは言った。

「ここでは何だから私の部屋で話そうか」

にゅうめんマンは副管長の後について副管長室に入り来客用のソファに腰を下ろした。そのソファを除けば机、戸棚とその他いくつかの事務用家具があるだけのシンプルな部屋だが、きれいに片付いていて割合居心地はいい。これで茶でも出してもらえれば言うことはなかったが、残念ながら何も出なかった。


「用件は何だ」

 副管長はいきなり話の核心に入った。ビジネスライクな人物なのだろう。

「三輪素子という女の人を知っているだろう。1月ばかり前にお前たちが誘拐した学生だ」

「……ああ。知っている」

「この人が数日前に突然行方をくらました。失踪する理由もきざしもなかったのに、どう考えてもおかしい」

「それで?」

「この失踪には宗教法人六地蔵が関わっているに決まっている。今すぐに三輪さんを返せ」

「一度誘拐したことは認めるが、今、うちと三輪素子とは関わりがない。何か別の理由で行方不明になったんだろう」

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