にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(11)
「ちくしょう、火炎放射器みたいな坊主だ。仏教徒が火を吹くとは世も末だ。火を吹くのは、ヨガが得意なインドの坊主だけで十分だ」
火傷を負った範囲が広く、かなり痛む。にゅうめんマンは大勢の坊主たちを打っちゃり急いで水を探した。早く水をかけて冷やさなければ、ひどい水ぶくれになりそうだ。シャカムニから授かったダサい服もかなり傷んでしまった。とりあえず建物に入ればトイレなりどこなりに水があるだろうと考えたにゅうめんマンは、広場の奥の大階段を飛ぶように駆け上がり、一際大きな正面の建物に駆け込んだ。そもそも、律儀に坊主たちの相手をする必要もなかったのかもしれない。
巨大な門から建物へ入るとすぐ、廊下の窓越しに中庭の池が見えた。これ幸いと、にゅうめんマンは最寄りの扉から中庭へ出て池にざぶんと飛び込んだ。トイレの蛇口を使うよりも池の水で火傷を冷やす方がずっと効率がいい。
「ふう。ひどい目にあった」
だが、のんびりしている暇はない。すぐにでも大量の坊主たちが後を追ってここへやって来るはずだ。
ところが、その坊主たちを迎え撃つまでの時間さえ、疲れたヒーローが体を休めることは許されなかった。突然何者かがにゅうめんマンの両足をつかんで池の中へ引きずり込んだのだ。今しがた坊主の火炎放射を受けて度肝を抜かれたばかりだというのに、またしても心臓が止まるほど驚いた。
水を飲み込んでパニックに近い状態だったが、にゅうめんマンは足をばたばたさせて、自分の両足をつかむ何者かをどうにか振り払い、必死の思いで地面に上がった。
「ごほっ、ごほっ、ぐほっ……」
しばらくむせてから、ようやく人心地がつき、にゅうめんマンは独りごちた。
「何だ今のは。まさかカッパ……?」
「カッパではない」
ちょうどそのとき、にゅうめんマンに追いついた坊主がその独り言に答えた。
「じゃあ、この池には何がいるんだ」
「宗教法人六地蔵水中部隊だ」
カッパと言ったのは冗談だが、水中部隊がいるとも思わなかった。けっこう広いとはいえ中庭の池で一体何をするというのか。
「なぜそんなものが庭の池に?」
にゅうめんマンは坊主に尋ねた。
「水中部隊なんだから水中にいるに決まっているだろう。そんなことも分からないのか」
この言いぐさには温厚なにゅうめんマンもカチンときて、坊主の体をつかんで高く掲げてから、池の真ん中あたりへ放り込んだ。
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