にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(10)

どれほど闘志に満ちていても、坊主たちの攻撃はやすやすと見切られてしまい、ほとんどにゅうめんマンの体に触れることさえできなかった。すごくがんばって攻撃を当とたとしても、生半可な打撃では全然効きめもなかった。


だが、どんなに優勢であっても戦場では決して油断してはならない。にゅうめんまんが無数の坊主の相手をしていると、握りこぶしくらいある石が、急に空からばらばらと降って来た。運よく直撃を免れたが、にゅうめんマンは肝を冷やした。


「空を見ろ!」

 誰かが上を向いて叫んだ。

「何だあれは?」

「鳥だ!」

「飛行機だ!」

「いや、あれは……宗教法人六地蔵空中部隊だ!」


上を見ると、ハングライダーにつかまった10人程度の坊主が V 字型の隊列をなして空を飛んでいた。部隊はできる限り低空でにゅうめんマンの頭上を旋回し、にゅうめんマン目掛けて石を落とした。援軍の到着に坊主たちは盛り上がった。


「もうついたのか!」

「はやい!」

「きた!空中部隊来た!」

「メイン部隊来た!」

「これで勝つる!」


援軍がにゅうめんマンをやっつけてしまったら、他の坊主は本来の目的を達成できないと思うのだが、かまわないのだろうか。この坊主たち、ひょっとしたら雰囲気に乗っかってわやわやしているだけで、何も考えていないのかもしれない。


一方、にゅうめんマンの気持ちは全然盛り上がらなかった。人の頭に石を落とすとはどういう了見か。流れ弾(石)が頭にぶつかって、そばに倒れているあわれな坊主の姿を見てもらいたい。髪の毛がないせいで余計に痛そうだ。


「危ないだろバカ!当たったらどうするんだ!」

 にゅうめんマンは空飛ぶ坊主たちにどなった。

「当てようと思って落としているんだろうが。バカはお前だ!」

「何だと!そもそも、なんで宗教法人に空中部隊なんてものがあるんだ」

「作りたいから作ったんだ。文句あるか。神聖なる六地蔵本部で暴れる不届き者は、痛い目にあいたくなければ、とっとと出ていけ」

「悪の組織のくせに何が神聖か!ようし、見てろよ……」


にゅうめんマンは足元に散らばっている石を拾って、ものすごい速さで放り上げた。石はハングライダーの1つにぶつかり、この坊主はバランスを崩して墜落した。にゅうめんマンは次々に石を投げて他の坊主たちも撃墜し、「奴らに目を付けられて次の正月を迎えた者はいない」とさえ言われた、宗教法人六地蔵のほまれ高き空中部隊を、ついに壊滅させた。


「やったぜ」

 組織の自慢である空中部隊の最後を目の当たりにして坊主たちはしょげていたが、にゅうめんマンの意気は高かった。だが、その慢心が油断を生んだ。そばにいた坊主が突然、にゅうめんマンに向かって口から火を吹いたのだ。

「あちゃちゃちゃちゃ!!」

これは、口に含んだアルコールを吹き出してそれに着火するという大道芸的な技だったのだが、にゅうめんマンは度肝を抜かれ、体を火傷した。

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