にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(8)
「にゅうめんパンチ!」
「ぐふっ!」
「にゅうめんキック!」
「ごへあっ!」
「にゅうめんチョップ!」
「のへっ!」
「にゅうめんヘッドバッド!」
「ぴよっ!」
迫り来る悪の坊主たちを、にゅうめんマンは次々になぎ倒した。――そうして敷地正面の広場でにゅうめんマンたちが大暴れする様子を、広場の向こうの大階段の上から、新任の副管長ホーネットが見ていた。二色の仮面、ダークグレーのジャケットに同色のズボン、平底のショートブーツという服装で、袈裟(けさ)を来ている他の尼とはまったく違う恰好だ。長い黒髪を除いて学生だった頃のおもかげはほとんどないが、これはこれでかっこいい。
この日は管長が出かけていたので、施設の運営は副管長であるホーネットに任されていた。なるべく問題は避けたい。それで、
《にゅうめんマンが何の要件で乗り込んで来たのか知らないが、私が出て行って話をつけるべきだろうか》
などと考えていたら、オレンジ色の袈裟を着た30がらみの坊主がホーネットの脇にすっと近寄って来た。
「すごい騒ぎですね。何が起こっているのですか」
坊主は尋ねた。
「不法侵入者が暴れているんだ」
「なるほど。……見たところ相手は小数みたいですが、それにしては我が方は苦戦していますね」
「相手は1人だ。でもその1人が、にゅうめんマンという、人間離れした怪力と身のこなしの持ち主なんだ」
「にゅうめんマンか。噂は聞いています」
それから一呼吸置いて、まじめくさった態度で坊主は言った。
「副管長」
「何だ」
「私なら、にゅうめんマンを取り押さえられます」
「すごい自信だな。それならすぐに行って取り押さえてもらえると助かる」
「ですが1つお願いがあります」
「お願い?まあいい。言ってみろ」
「そのう……にゅうめんマンを取り押さえられたら、ほおにキスしていただけないでしょうか」
実はこの坊主は、新任副管長のホーネットに一目惚れした純情坊主だった。
「キス?副管長にセクハラとはいい度胸だ。……しかしまあ、本当ににゅうめんマンを取り押さえられたら、それくらいはしてやらんでもない」
「本当ですか」
「女に二言はない」
「やった!!この勝負もらったああああ!!!」
坊主は喜び勇んで目の前の大階段を走り下り、途中でつまずいて下まで転げ落ち、地面の上にあえなく横たわった。
「くっ。にゅうめんマンめ……無念だ……」
激しい打撃を受けて言うことをきかなくなった自分の体を呪いつつ、坊主は熱い涙を流した。
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