にゅうめんマン、悪の教団に乗り込む(7)
一夜明けて、にゅうめんマンは宗教法人六地蔵の本部まで歩いて出かけた。自宅と同じ市内にあるのでそれほど遠くはないが直接訪ねるのははじめてだ。
六地蔵の本部はとても大きい。表から見たところ敷地の幅は数百メートルある。周囲には塀が巡らされていて、屋根のついた大きな正門から中を除くと、正面に広場があり、その向こうに大階段があって、それを上った所にどでかい威圧的な建物が鎮座(ちんざ)していた。敷地内には他にも、けっこう大きな建物がちょくちょく立っているようだ。仏教の施設ではあるが、建物はどちらかというと洋風の現代的な建築であり、普通に寺と言われて思い浮かべる瓦葺きの建物はない。正面広場の地面もブロックで舗装されていた。
にゅうめんマンが正門から中へ入ろうとすると、立番をしていた警備員に呼び止められた。坊主ではないのか、いわゆるガードマンの格好をしている。
「ちょっと!」
「何ですか」
「信者の方ですか」
「信者ではないけど六地蔵の関係者です」
「六地蔵とどのような関係ですか」
「こちらのお坊さんたちと日頃拳を交わし合う仲です」
「拳を交わし合う方に入られちゃ困りますよ。そもそも、どういう要件ですか」
「こちらの親玉に尋ねたいことがあるんです」
「突然来てそんなことを言われても通せません」
「どうしても入っちゃダメですか?」
「どしてもダメです」
「ならば仕方ない」
にゅうめんマンはにやりと笑った。
「力ずくで入らせてもらいましょう」
「何だと……?」
それまで頼りなく見えた警備員の顔が急に険しくなった。
「そいつぁ困るな。こっちも遊びじゃねえんだ。そちらが力ずくで入ると言うなら、俺も力ずくで止めねばなるまい。ここが貴様の墓場になっても責任はとれないぜ」
「警備人にしちゃあ物騒なことを言うじゃないか。まあいい。止められるものなら止めてみろ!」
言うやいなや、にゅうめんマンは門の中に駆け込もうとしたが、横から警備員の体当たりを受けた。
「行かせるか!」
だが、それしきのことでにゅうめんマンはびくともしない。自分の体にしがみつく警備員の服を片手でつかみ、その体を宙に放り投げた。警備員は地面に叩きつけられた。
「ぐふっ」
「ふふん。たわいもない」
警備員の制止を振り切ったにゅうめんマンは正面の大きな建物の方へ進んだ。一方、正門に併設された詰め所では別の警備員がすぐさま施設全体に警報を発し、敷地内のさまざまな建物から、非常ベルが一斉にけたたましい音を立てた。
「曲者だあ!」
さらに別の警備員が声を限りに叫びつつにゅうめんマンの後を追った。非常ベルに驚いた坊主や尼も複数の建物から飛び出て来た。
「その男を捕まえてくれ!不法侵入だ!!」
大勢の坊主たちに向かって警備員は再び叫んだ。それで、体力に自信のある者たちが群がるように、にゅうめんマンに襲いかかった。通報を受けた他の警備員も集まって来て、施設はハチの巣を突いたような騒ぎになった。
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