乙女のピンチ!(5)
「そちらの要求は何だ。俺のにゅうめんか」
にゅうめんマンは卦六臂に呼ばわった。
「そのとおり。三輪素子の命が惜しくば、今晩午前1時ちょうどに指定の場所まで、シャカムニ特性にゅうめんの材料20人分を持って来い」
そう言うと、卦六臂は折り畳んだ紙をにゅうめんマンの方へ放り投げた。
「その地図に一カ所印をつけてある。そこで人質とにゅうめんを交換だ。もう一度言うが、時間は今晩午前1時だぞ。必ず1人で来い。そして、このことは誰にも言うな。下手なことをすれば人質の命はない」
「分かった」
そうして用が済むと、卦六臂たちは三輪さんを連れてすぐに引き上げたが、去り際に坊主たちは1人ずつ捨てゼリフを残した。
「敵ながらあっぱれだ。にゅうめんマン。俺たち4人を相手に善戦したこと、ほめてやろう」
「なんで俺がお前にほめられないといけないんだよ」
「次はゲートボールで勝負だ!」
「断る」
「これで勝ったと思うなよ。俺たちを倒しても、第2、第3の『六地蔵ファイブ』がお前の前に立ちはだかるだろう」
「六地蔵ファイブって何組もあるのか?」
「たまたま俺たちに勝ったからって調子に乗るんじゃないぞ。真の地獄はこれからだ」
「『真』でない方の地獄がまだなんだが……」
坊主たちの捨てゼリフに適当に対処してから、連れ去られる三輪さんににゅうめんマンは言った。
「三輪さん。必ず迎えに行きます!そのときまで、きっと無事でいてください」
「にゅうめんマンさん……」
「こら。しゃべるな」
六地蔵ファイブと三輪さんはHONDAのバンに乗って走り去った。にゅうめんマンも三輪さんの身を案じつつその場を去った。家へ帰る前に、にゅうめんの材料20人分を持ち運ぶための入れ物を調達しなければならない。
* * *
卦六臂が指定した人質の交換場所は、人気のない海岸だった。確かに夜中にこんな所へ来るやつはいないだろう、という感じの場所だ。にゅうめんマンの家からはそれほど遠くない。にゅうめんマンは新たに調達した大きなリュックサックを背負い、盛んに鳴く虫の声を聞きながら、真夜中の海辺の道路を、その場所へ向かって一人歩いた。リュックにはもちろんシャカムニ特製にゅうめんの材料が入っている。
《大丈夫かなあ。三輪さん》
だが、そんなことは考えてもどうしようもない。にゅうめんマンにできることは、時間どおりに指定された場所へにゅうめんの材料を持って行くことだけだ。
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