乙女のピンチ!(4)
「うわさどおり手強い男だ。4号、ここは2人で一気に攻めよう。ゲートボールで鍛えた俺たちのチームワークを見せてやれ!」
「よしきた、3号!」
六地蔵ファイブ3号と4号は同時ににゅうめんに飛びかかった。だが、にゅうめんマンは2人の動きを簡単に見切って、3号に足払いをかけ、4号の攻撃をひらりとかわして腹にパンチを打ち込んだ。2人は砂浜に倒れたが、3号は再び立ち上がってにゅうめんマンに殴りかかった。だが、ゲートボールで鍛えた3号の力も、にゅうめんで鍛えたにゅうめんマンの力には歯が立たず、胸にパンチを受けて、またしてもその場に倒れた。六地蔵ファイブの坊主たちは全滅した。
《ちょっと弱すぎるんじゃないか。なんであえて戦いを挑もうと思ったんだろう……》
にゅうめんマンは不思議に思ったが、その疑問はすぐに解消した。
「にゅうめんマン!その場を動かず静かにこちらを向け」
急に後方から女の声で呼びかけられて、にゅうめんマンは言われたとおりその場で振り返った。すると、にゅうめんマンから数メートル離れた所で、卦六臂が三輪さんの体を後ろから片手で捕まえ、もう片方の手でのどにナイフを突きつけていた。
どうやら、坊主たちがなるべく派手に騒いでにゅうめんマンの注意をそらしている間に卦六臂が三輪さんを人質にとる、という計画だったようだ。三輪さんを人質にしたければ、一人でいるときに誘拐するとかもっと確実な方法もある気がするが、にゅうめんマンがその場にいる状況で実行したかったとか、たまたま2人が一緒にいたけどかまわず方を付けることにしたとか、何かの事情があるのだろう。
「三輪素子、あんたも隙を突いて逃げようなんて考えるな。何かおかしなことをしたら躊躇(ちゅうちょ)なくのどを切るからな」
卦六臂は三輪さんに釘を刺した。
「……」
三輪さんはなかなか肝が据わっているようで、とり乱したりはしなかったが、その顔には緊張がみなぎっていた。
「三輪さんを放せ!」
にゅうめんマンは言った。
「放せと言われて放すようなら始めからこんなマネはしないよ」
「それもそうか。ならば――」
にゅうめんマンは足元に倒れている3号の袈裟をつかんで体を持ち上げた。
「3号をどうするつもりだ」
卦六臂がたずねた。にゅうめんマンは答えた。
「この坊主と三輪さんを交換しよう」
「……なんでやねん」
「不満か?」
「当たり前だ」
「仕方あるまい。それならこいつら4人全員と交換だ」
「バカかあんたは。そんなみすぼらしい坊主100人だって要るもんか」
「ひどいっ!!」
思春期の女子中学生のように繊細なハートを持っている坊主たちは、卦六臂の心ない発言にショックを受けた。
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