2章 にゅうめんマン vs 悪の教団幹部

にゅうめんマン vs 悪の教団幹部(1)

ここは悪の坊主たちの教団本部。つるつるに頭をそった教団トップの管長が自室の机で書類を読んでいると、誰かが木製の扉をノックした。

「入ってくれ」

「失礼します」

 ごてごてした袈裟(けさ)を身につけた坊主が深刻な面持ちで入って来た。教団幹部の根子丹という坊主だ。なお、「根子丹」は本名ではなく坊主としての名前(戒名)。

「揉上市の布教行列が謎の男にやられたという報告が入りました」

「やられたとはどういうことだ」

「行列に参加していた僧たちが、変な恰好(かっこう)をした1人の男と取っ組み合いをして、やられて、逃げて帰ったそうです」

「こっちは100人以上いたはずだろう?その男がどれほど変な恰好をしていたか知らないが、1人にやられるなんてことがあるのか」

「ところがその男、人間離れした怪力と身のこなしだそうで、何人でかかっても歯が立たなかったとのことです」

「よく分からんが厄介だな。謎の男といったがまったく素性は分からんのか」

「『シャカムニの使者、にゅうめんマン』を名乗っていたようです。覆面をかぶっていて顔は見えなかったと聞いていますが」

「シャカムニの使者だと?」

「はい」

 管長は何か考える素振りを見せた。

「……シャカムニというと、仏教の開祖である釈迦(しゃか)のことだろうな」

「そうだと思います。他にシャカムニなんて名前の人物はいませんし」

「多分頭のおかしな男が勝手に名乗っているだけだとは思うが……。根子丹、念のために1つ頼まれてくれないか」

「はい。何をですか」

「その男を生け捕りにしてつれて来てほしい」

「ですが、100人以上の人数でもかなわないほどの強さだそうですので……」

「心配するな。今からお前に私の力を貸し与えよう」

「管長の力を?」

「そうだ。こちらへ来てくれ」


根子丹は大きな机の向こう側にいる管長の目の前へ移動した。管長はいすから立ち上がって根子丹の両肩をつかんだ。思いがけぬ展開に根子丹は動揺した。

「ああ。管長。まだ心の準備が……でも管長が相手なら……」

「まじめにやってるんでちょっと黙っててくれるか」

 管長はその体勢のまま目をつぶって精神を集中した。すると、肩においた両手から根子丹の体に、管長の膨大なエネルギーが流れ込んだ。突如として巨大なパワーの流入を受けた根子丹の体はぶるぶるとわななき始めた。

「ああ。すごい。これはすごいぞ!管長のみなぎるパワーが、熱烈な愛が、俺の体に流れ込んで来る……!!」

「いい加減黙らんと本気で怒るぞ」

「ごめんなさい」

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