にゅうめんマン参上!(2)
「誰だ!」
坊主たちが声のする方を見上げると、二階建ての家の屋根に、スピードスケートのユニフォームのようなぴちぴちの黒い服を着た男が立っていた。その服には「にゅうめん」という金色の斜め向きの文字が、全身にいくつもプリントされている。顔には同じ柄の
「俺はシャカムニの使者、にゅうめんマンだ。今すぐその家族を解放して街から出て行け」
それを聞いた坊主たちは声を上げて笑った。
「いかれているのは服装だけではないようだな。これだけの集団相手に1人で何ができる。お前の言うことなど聞くものか」
「何ができるか今見せてやる。とぉっ!」
にゅうめんマンは軽やかに屋根から飛び降りて道路に着地した。
「取り押さえろ!」
坊主の1人が叫んだのを合図に、数十人の坊主たちが一斉に男に飛びかかった。にゅうめんマンはあっという間に坊主に埋もれて見えなくなった。
「大口をたたいたくせにたわいもない」
リーダー格の坊主は言った。ところが、すぐに坊主たちの山の下から大きな雄叫びが聞こえた。
「うおおぉぉぉーーーっ!!」
下敷きになっていたにゅうめんマンは、ものすごい力で坊主たちを突き飛ばし、坊主山から脱出した。あっけにとられている坊主たちの前で、にゅうめんマンは家の壁を背にファイティングポーズをとった。
「さあ。どっからでもかかって来い」
「何だと。調子に乗るな!」
坊主たちは次々ににゅうめんマンにおどりかかった。だが、にゅうめんマンはすべての攻撃を正確にかわし、襲いかかる相手1人1人にいなずまのようなパンチを叩き込んだ。この猛烈な打撃にたえられる者はなく、坊主は次から次へばたばたと倒れていった。やがて、あえて攻撃をしかける者もいなくなった。
「やむをえん。引き上げだ!」
リーダー格の坊主の合図で、坊主たちは一斉に逃げ出した。道にのびていた坊主たちも、意識のある者は苦しそうに立ち上がって逃げて行った。気を失っていた者も、にゅうめんマンにたたき起こされてよたよたと逃げ去った。
「母ちゃん!恐かった」
恐ろしさに立ちすくんでいた子供が母に抱きついた。
「よしよし。もう大丈夫だよ」
「妻よ!子よ!無事でよかった」
父も涙に目をくもらせて妻子に歩み寄ったが、どちらからも無視されたのでこの世の終わりみたいな顔をした。
ひとしきり子供を抱きしめてから、いじけている夫に代わって妻がにゅうめんマンに礼を言った。
「助けていただいて本当にありがとうございます。何とお礼を申し上げてよいやら」
「どういたしまして」
「それにしてもすごくお強いんですね。私、強い男の人がタイプですのよ」
妻はハリウッド女優も真っ青のウインクをした。にゅうめんマンは見なかったことにした。
「それじゃあ、坊主たちは退散したので俺も帰ります」
「今すぐ帰るんですか?うちでゆっくりしてらしたらいいのに」
「気持ちだけありがたくいただきます。さようなら」
まばゆい太陽に照らされて、にゅうめんマンは徒歩でどこかへ帰って行った。
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