第4話 止まない雨はない
無言でふらふら歩いていると、いつのまにか商店街を抜けていた。
住宅街をのんびり歩く。
雨も上がり、太陽がちらりと見え隠れしていた。
「まさか、こんなことになろうとはね。
卒業式の時には全然想像もできなかった」
ぽつりとつぶやいた。
「ね、すごいことになっちゃったね」
外出は気軽にできなくなるし、除菌グッズはどこもかしこも品切れだし、何もかもがしっちゃかめっちゃかだ。
それにしても、どこに行くつもりなんだろう。
私はあとをついて行っているだけだ。
ただ、目的もなく歩いているようにしか見えない。
「何でまた、あそこに? 何かあった?」
あれ、どうしよう。私が逆に聞かれちゃった。
なんて答えればいいかな。
何となく梅雨さんがいる気がしたから、あそこに行っただけだ。
遊びに行くような場所でもないけど、本物の鬼がいるとは思ってもないだろうし。
彼にとって、神社の鬼は都市伝説のままだ。
いっそのこと、素直に話したほうがいいかな。
心配していたのは確かな話だし。
返答に困っていると、彼は薄く笑う。
「変なこと聞いちゃったかな……今のは気にしないで」
「でも、心配してたよ。神社の人」
少しだけ目が見開かれた。
誰もいないと思ったし、曰く付きの場所だからこそ、一人になれると思っていた。
予想外というか、完全に余計なことを言ってしまった気がする。
「えっとね、神社の人がなんか裏で様子を見てたらしくてね、あの白い花を見てた友達が寂しそうだったって言ってたんだ。
ほら、死に際の猫みたいなオーラ出してるって言ってたでしょ?
多分、そのことを心配してたんだと思うんだけど」
黙っているつもりだったけど、もう取り返しはつかない。
梅雨さんが言っていたことをそのまま言うしかない。
「それでね、ここに来たからには、何かあるんじゃないかって言われちゃって……。あ、不良じゃないとは言ったんだよ? 霧崎君、確かに先輩たちから注意とか受けてたけど、全然そういうふうには見えないし」
「分かった! 分かったから、ちょっと落ち着こう?」
焦ってしまったあまり、自分でも気づかないうちに早口になってしまった。
「そうか。神社の人、いたのか……全然気づかなかった。
その話をしたってことは、今日もいたんだよな?」
「そう。気晴らしに遊びに行ったら、この前のことを聞かれたの」
まちがったことは言っていない。本当にそのまま素直に伝えてみただけだ。
彼は困ったように頭をかいた。静かになるときほど怖いものはない。
「今度、ちゃんとあいさつしに行った方がいいかな。
そこまで心配かけられてるとは思ってもなかったし」
とりあえず、迷惑だとは思われていないみたいだ。
ほっと息をついた。
「雨の日なら、いるんじゃないかな。多分」
「何で?」
「外に出るだけで雨が降るんだって」
「とんだ雨男じゃん。いや、雷様か?」
霧崎君は吹き出した。
雨男、そう言われてみればそうか。
二人で笑い出したのだった。
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