第12話
「次に、相手をじわじわと苦しませたい場合には、毒殺を用いるのが適当でございましょう。殺したい方に服用させますと、次第に苦しみはじめ最後にはもがき喉を掻きむしるようにして果てるでしょう。相手が苦しむ様を楽しみたい方向けでございますが、お時間が少々かかりますのが難点かと思われます」
だんだんと気分が悪くなってきた。
「えー、最後に――」
「もういいっ!」
今度は俺が渡邉の言葉を遮る番だった。
「もう……聞きたくない」
「そうですか? そうですね。では一言だけ。絞殺はあまりお勧めいたしません」
「…………」
一言だけと言いながらしかし、渡邉は構わず説明を続けた。
「あれは純粋に人殺しを楽しんでいるか、或いは愛情の裏返しか。とにかくあまりお勧めはいたしません」
「……分かったよ。よく分かったから……もう……」
俺は耳を塞ぐようにしてうなだれた。
「お分かり頂けまして何よりでございます。それでしたら、私からの説明は以上でございます。こちらに書類一式と十日間のみ使用可能な携帯電話を置いていきます。何かございましたらいつでもお気軽にお電話くださいませ。私が二十四時間体制で対応いたします」
「……分かった」
「それでは、私はこれにて失礼させていただきます」
深々と一礼し、そそくさと玄関へ向かう。その渡邉の後を追うように玄関へと向かう。行儀よく靴を履いた渡邉は、一旦手にしたアタッシュケースを再び玄関のたたきに置き、ゆっくりと振り向いた。
「最後になりましたが」
「最後に……何?」
左腕の袖口をめくり腕時計を見た後、渡邉はサッと右手を上げた。
「只今より滝沢一彦様の『人殺し権』被試験者任用期間、開始でございます!」
こうして俺の地獄の十日間、『人殺し権』生活がスタートした。
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