第4話
僕が大学に行くために起きると彼女はまだ寝ていた。十分とは言えない広さのソファーで器用に丸くなって寝息をたてている。あくびをしながらキッチンに行き、お湯を沸かして緑茶をいれ、パンをレンジで焼いた。彼女に気を遣い音を小さくしてテレビをつけた。10月19日午前8時38分。10月というのはなんとも言えない時期だ。特に文句もないし、好きなところも思いつかない。しかしニュースでは日々不倫だ、政治がどうとかと飽きずに騒いでいる。メディアが適当な人を吊し上げ、仮面をつけた人々が石を投げつける。とても楽しそうだ。
「おはよう、はや起きなのね」ミツキが眠そうな声で言った。
「今日は大学の授業があるんだ」
「何の授業?」
「経済」
「それはあなたの人生に必要なものなの?」
「いや、いらないと思う」
「ばっかみたい」
「たしかに。君は大学に行ってないのかい?」
「そんな所には行かないわ」なぜ?と聞こうと思ったがやめた。きっと大学で習うことなんて彼女にとってはこの知らない俳優の不倫と同じようなものなのだろう。。僕と彼女は住んでいる世界が違う、そんな気がする。僕が地球人で彼女が月の住民。
「朝食や昼食は家にあるものを適当に食べてもらっていいよ」
「ありがとう」
「3時頃に帰ると思う」
「わかった」
「君はこの俳優の不倫についてどう思う?」
「どうでもいいと思う」彼女はどうでも良さそうに答えた。
「なるほど」
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