第2話 昨日の記憶
翌日、6月25日火曜日。
春斗は昨日の美咲の「都市伝説って知ってる?」という言葉がずっと気になっていた。
春斗は3限の授業が終わり大学の図書館に来ていた。
いつも通り暇だからと理由だけではなく、美咲の昨日の言葉の意味を知りたいから聞きに来たという理由もあった。
春斗は図書館に来てから美咲を探したが見つからなかったので、昨日読んでいた「世の中の不思議都市伝説」を新刊コーナーで手に取り二階の読書スペースで続きを読むことにした。
読書スペースに行ってみると、まだ3限が終わった15時を過ぎたばかりだったので、多くの学生が座って課題をやっていて、座れる席が昨日座った窓側の席しか空いていなかった。
春斗は「世の中の不思議都市伝説」を夢中になって読んでいると、向かいの席から聞き覚えのある声がしてきた。
「君、都市伝説って知ってる?」
春斗はその声がした方を向くと、美咲が笑顔で頬杖を突きながら座っていた。
「はい、詳しくはないですけど知ってますよ」
春斗が本を閉じて言った。
すると美咲は少しがっかりしたような表情で、「そっか」と言うと席から立ち上がり背中を向けた。
春斗がそんな美咲の背中を見て、今日一日中疑問に思っていたことを言った。
「なんでこんな質問を2日も連続でしたんですか?」
すると美咲はすぐに振り返った。その目は少し涙を含んでいた。
「君、昨日のこと覚えてるの?」
美咲の声は図書館の2階にいたすべての人に聞こえるくらいの大きな声だった。
「は、はい。さすがにまだ1日前のことを忘れるような歳じゃありませんし」
「そっか、そっか覚えてくれてたんだ!」
美咲の目からは涙があふれていた。
そんな光景を見ていた周りにいた学生からは「あの男がなんかしたのか」や「女を泣かせてる」などという誤解が生まれていることを周りからの視線で春斗にはわかっていた。
ここにいたら明日から「女にちょっかいを出した男」や「女を泣かした男」などという噂が大学内で流されてしまうと思った春斗は、急いで美咲の手を引っ張り、本をもとにあったところに戻し図書館を出た。
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