つめたい波のまにまに

かすかに踊る波の調べ

もうなにも要らない

もうなにも望まない


しろい泡が落とす影が

つかず離れず浜を滑る

このままでいいの

このままでいるの


つまらない我欲の果てに

捨ててしまったものがある

二度とは戻らないだろう

胸の暗がりから声がする


ひとつぶの宝石があるとして

まず大切なのは輝きだ

切り出したのは誰なのかではない

結果から理由を手繰るのだ


どれだけ苦労をしてきたのかや

どれほど頑張ったのかではなく

必要なのは現実なのだ

それ以外は付加価値である


砂粒ほどの射幸心

水平線のような願望

その無力で強かな光が

わたしを生かしている





20201119

第96回 詩コン『芯』

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