スパークしだした追懐の渦は

目を刺す電光で連鎖する

学級文庫にはない死人花という字の楽園は

不織布テープのいびつな切れ端から現を盗み

虚として滝壺に近い流れに飛び込む翡翠

反射する鱗はもう日暮れの様相を見せ始めた

落日色のカレンデュラは

要は悲嘆ということだ


いつまで続くか息絶え絶えで

それでも腹を裂いて生まれた言葉は

氷室の藁に隠しきれずに融け出してしまう

注視する間に変わる文字からこぼれる星は

死ぬまでショートし続けるだろう

空蝉の虚像でも符合するなら桎梏を捨てたい

ちぎる指から湯気が立ちのぼる

夜気に可淡のドールは眠る


一閃の交信に枝分かれをした

記憶の氾濫にクラッシュしており

ストレージは上限で保存不可なはずなのに

次次と胸を突きあげてくる徒花の眩しい白が

ひとときの微睡すらも許してくれない

そうだ これは増殖していくウイルスなんだ

共生するか消すかの二択で

摘んだアスターを握り締める





20201105

第94回 詩コン『鮮』

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