いくつもの経験が絡みあい

縒りあわさっては糸になる

誰もが持っているその糸は

人生のみちゆきそのものだ


糸巻きはときにくびきとなるが

出ていく糸を見送るものだ

張り詰め たゆみ

縺れて ちぎれ

縒り直されてはつながって

永劫に長く伸びてゆくのを

運命の手から見守るものだ


捩れた糸を正せるか否かは

持ち主の心にかかっている

物語は好きに読み返せても

時間の流れは巻き戻せない

不器用でもただひたむきに

諦めないことが肝心である


差す陽のように麗かであれ

澄む水のように清廉であれ

誰もが持っているその糸は

わたしたちの絆そのものだ


──命のわだちそのものであり

  人の魂そのものである




200924

第89回 詩コン『糸』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る