あかりをだんだん落としていきます

ひとつ ふたつ と忘れていきます

平熱以上・微熱未満のすこし難儀な体温は

昼間の憂さを手放して眠りにつくにはちょうどよく


まぶたをゆっくり閉じていきます

みっつ よっつ と数えていきます

空の許では見えないものに

次第に包まれていきます

いつつ むっつ と重ねていきます

気づけば思考の檻は消え去り

自由に軽くなっていきます


平熱以上・微熱未満の風に吹かれた体温は

やがて自分を取り戻し目を覚ますにはちょうどよく

あかりのだんだん灯るなか

今日も帰途につけるのです


夢の記憶があいまいなのは

別のいのちを生きていたから

意識のON・OFFのときに

別の世界線を跨いでいるから


ひとつ ふたつ と繰り返します

寝るのは生者の特権だから

みっつ よっつ と続けていきます

いつつ むっつ と口ずさんでは

あした咲く花を見にいきます




200918

第88回 #詩コン 『寝』

2作目

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