1-5 取り調べ

「田中、お前は山田が犯人と思うか?」

「ないと思います。 死んでほしいと思っていたのはあの様子からはうかがえます。 だからと言ってそれ自体は犯罪にならないです。 先輩もひとりやふたりはいるでしょう。」

「その言葉、刑事が言う言葉か?」

「先輩こそ、その言葉を言わないでください。 先輩みたいになりたくないで。」

ー 俺はこいつにどう見られているんだ。

 コンコンとノックする音が聞こえる。

 田中はどうぞ、とうながす。

 180cmで肩幅は広く、手をこすっている。

 冷え性のだろうか。

 格好は黒いパンツ。 上着は3つほど重ね着をしている。

 髪は短髪で清潔感がある。

「そこに座ってください。」

 田中に言われると松本は座った。

「俺は君らを疑っている。」

「分かっています。 刑事さんの立場ならボクもそうしますよ。」

「物分かりがいいじゃないか。 君は村上勇気が憎いか?」

「ストレートな物言いですね。 憎いですよ。 山田から訊いたんですか? ボクらが村上を憎んでいること。」

「聞いたさ。 俺は刑事だ。 取り調べをさせてくれ。 君と山田との関係は聞いた。 村上と坂上との関係性は?」

「坂上はたまたま授業でとなりの席になって仲良くなりました。 村上は知人を介してです。村上は第一印象はいい奴と思ったんです。 だけど、違いました。 仮面を被っていたんです。 あれほどのやつは見たことがない。 つい感心してしまう自分がいるんです。」

「ほぉ、君はなぜ村上と友達でいる。」

「あいつは仮面を使い分ける。 それがとても上手いんです。 ボクが言ったところで狼少年あつかいになるんですよ。 あいつの悪いところを言ったところでね。 みんな、あいつを信じる。 だから、偽りの友達としている。」

「金銭のやり取りはあったのか?」

「ありましたよ。 ボクがアルバイトしていた給料日を分かっていたのか借りたいと言ってきました 帰ってくることはなかったですけどね。 坂上からは相当な額を取っていました。」

 山田との話が一致する。 村上は金銭的な恨みをかっていた可能性はある。

 だが、3人とも金銭的に動機となりえる。

 一番、貸していた額は坂上だ。

 坂上を疑うべきか? いや、視野を狭めるのはよくない。

 白紙に戻そう。

「では、村上を殺したのは誰だと思う?」

「さぁ、ボクじゃない。 殺してくれたことには感謝しますよ。 これからは悩まなくていい。 他の2人も感謝していると思います。」

「そうかい。 最後に質問だ。 もし100万円入ったらどうする?」

「変な質問ですね。 半分は貯金して、あとの半分は使うです。 うん~違うかな。 いや、変えないです。」

 安定的な思考か。 参考になる。

「ありがとう。 坂上を呼んできてくれ。」

「分かりました。 今、訊かれたことは言わないですよね。」

「そうだ。 物分かりが良くて助かる。」


 

 

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憎まれ役をやったのは誰だ? ナマケモノ @cola99

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