オレサマ オトコ コワイ マルカジリ

 どうしよう。

 やっぱり、断るしかないよね。


 いや、確かに彼氏が欲しいとはボヤいてはいたけど…。


 家に帰ってからも困惑状態であった。


 告白されてから意識しちゃって急接近!!

 とは、ならない。

 突然、娘が彼氏を連れてきた時の父親ってこんな気分か?いや、なんか違うか。


 メンタルダメージ……ぱねぇ。

 断ったら、もう友達として会わなくなる気がする。


 だ、誰か相談にのってくれんか?


 同僚君?

 いや、今回初対面だしなぁ。


 ヒロ?

 彼はシノの肩を持つよなぁ。



 そうだ、いるじゃんか!

 人一倍手慣れてそうなやつ!


「もしもし?」

「あーっはは!!絶対、電話来ると思ってた!!」



 おい。

 キング。

 説明しろ。

「シノは元々、興味あったみたいよ?

 2人を俺の家に呼んだ時、電話番号の交換の仲介は俺がしたし、ヒロも来なかったから気を使ったんじゃない?」


「でも、あの日は私は生主さんと一緒にいたし……」


「そうそう、それで、セイユはモンハンやってるからソレにこじつけて誘えって、俺が言った!」


 こいつ!

 人事だと思って、ゲラゲラ笑ってやがる!


 そう言えば、元々2ndGはシノに誘われたんだった。


「昨日会ったんでしょ?

 ネイルとイチズは俺の紹介だよ。女か彼女持ちよこせって言うから…ま、その様子だと脈は無いのかな?」


 処理しきれない。


 えぇっと私、何を相談したかったんだっけ?


 流石キングである。


「んじゃ、聞くね?迷ってる?」


 いや、迷ってはいないかな。

 しかし、断る理由もない。

 シノの何がダメなのかが自分で分からない。

 いい子じゃないか?明るいし、しっかりしてるし…。でも、なんかこう……。


「もう俺達もそう言う年だし、付き合えば結婚も視野に入るかもね」


 けっ………結婚………だとっ!?


「結婚相手の理想とかあんの?」

「突然言われても……」


 あー、でもアレだな。

 うちは家庭内がごちゃごちゃしてるから、出来れば、相手の家に嫁に行きたくない。

 行っても親と同居は無理。


 というか、そもそも男として見ていないんだな。

 しかし、そんな断り方するのもなぁ……。


 すると、キングから決定的な情報が出る。


「あいつね、派遣やってるけど〇〇駅前の飲食店の跡取りだよ」

「はぁ!?」


「派遣社員は社会勉強らしいよ。あいつは一人っ子だし、店も繁盛してるし、良いじゃん!玉の輿じゃない?

 あ、あと、祖父母と同居してておばあちゃん子だよ!

 ハハッ一緒だね!」


 誰がおばあちゃん子だよ。

 おばあちゃん子、お呼びじゃないんよ。

 1番分かり合えないわ。



 化粧台の鏡に写った私の顔、能面。


「私、返事、すぐするわ…」


 キングと電話を切り、携帯を置きもせずそのままシノにかけた。



 案の定、シノとは疎遠になった。

 セットでヒロも。


 はぁ…………。


 友達少ねぇ………。



 2日後、今度は同僚君から電話がきた。


「あの、さ」


 今度は何っ!?


「こないだお前『私たちって友達か?』って聞いたじゃん?」


 え、言ったっけ?

 全然覚えとらん。


「それでさぁ、考えたんだけど、よかったらさぁ…」


 やめて!もうダメなの!

 ライフ0なの!


 まぁ、結局こいつと付き合うんだけども。



「あー、あー、私こないだスーパーの秋刀魚をトングで掴んでナイロン袋に入れたらさぁ、秋刀魚がナイロン袋を突き破って床にツルーンって滑ってったんだよ!凄くない!?

 なんか抜き身のナイフみたいでゾクゾクするよね!?」


「えぇっと……俺はあんまり……」


「私モンハンはもうオンラインでいいわ。オフ会にも行きたいし!」

「そうなんだ…」


 しばらく話して遊びの予定を入れる。


「んじゃまた!」

「うん、ラーメン大食いコースでな!」


 ふぅ……友達を死守!


 まぁ、離婚すんだけども。

 うぅ。


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