ナイト君の悩み

「キングが地元に帰って来てから、よく誘われて………」

「うんうん」


 確かナイトは引き込もりになってて、それでキングがリハビリを兼ねてオフ会に連れてったりしてるんだよね?

 生主さんに聞いたなぁ…。


「俺、別に行きたくないのに……」


 ありゃりゃ。


「引きこもってると、みんな心配すんだよ…俺、人と喋りたくないし、会いたくない。

 ずっと引きこもってると、いかにも異常みたいな事言われんだよ…」


 あぁ、なんか分かるかも。

 キングは常に一人でいるって無いもんなぁ…価値観を押し付けられてたのか?


「断って見れば?確かキング今は県外に居るんだよね?そんなに過干渉なの?」


「俺が外で遊んでるか、なんか監視されてる気がして……」


 監視ねぇ……。


 そう言えば、君ちょっと痩せたね。


「家ではいつも絵を描いてるの?」

「絵しか描いてない。他は何もやる気しない」


 ふーん。


 まぁ、1人きりの時間欲しい時ってあるよね。

 私もスプラッタ映画は1人で一日中見る時あるし。

 ナイトもそんなタイプなんだろう。


 そこに生主さんからメール。


『どう?』


 何がだよ。


『鬱っぽくない?』


 はぁああああ?!


 やっぱりか!

 わざと2人にしやがったな!

 くそーーーー!!


『私も医者じゃないから分からんよ…』


 こんな相談されても……。

 うーん、そもそも鬱が酷いと絵を書く気力もなかったけどなぁ…。

 でも、現代鬱とか仮面鬱とか確か色々種類があったはず。

 それでも食事も睡眠も取れてるみたいだしな。


 何より、まず私より医者でしょ…。


 とりあえずその日はナイトの愚痴を聞き、一旦お開きとなった。


 下手に勧めてもなぁ…ごっそり薬を出しまくる医者もいるしなぁ…。

 その1週後。


 水槽のウーパールーパーを眺めながら晩酌。

 やはり労働後の酒はうまい。


 あ、惜しい!

 今、もう少し早ければアカヒレ食えてたぞ!

 むふふふ、可愛ええ。


 電話がなる。うさぎ君だ。


「おーうさぎ君、今うちのウーパールーパーがさぁー」


 私は一通りウーパールーパーのエラのフサフサ育成について喋り倒す。


「実はさ、相談があってさぁ」


 おう。


 そう言えば、うさぎ君は最近彼女が出来たので、私から連絡するのは控えていたのである。


 なんだなんだ、もう別れ話か?


「彼女の記憶がさ、度々飛ぶんだよ…。

 覚えてないの。

 酒も薬もやってないんだよ…病気なのかなぁ?」


 だから医者じゃねーっつーの!


 39度の熱があって、インフルエンザかなぁ?って聞いてるようなもんである。


 アレだな。

 やっぱり精神科への最初の一歩ってのは、勇気ときっかけがいるようである。

 そんなに構えなくても。


 最初なら内科さんでも、ちゃんと聞いてくれるよ。

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