お絵描きオフの罠

お絵描きしませんか?

 ある日、生主さんが連絡してきた。


「セイユちゃんて、絵も描く?」


 うぅーん、ちょっとだけ真似事した事はある。

 でも、今は描いてない。


「絵が趣味の人達をキングに紹介してもらったから行かない?」

「何をするの?」

「みんなで絵を描きながら喋ったりする」


 へ、へぇ。

 なんかド素人の私、話に付いて行けなそうな感じするけど…


 でも、みんなが絵を描くところ見たいなぁ。


 とりあえず、行くと伝えてバッグにスケッチブックを入れる。

 場所は町外れのとある無料の研修室。今にも崩れそうな人気の無い場所である。手続きをすれば誰でも借りれる。


 もしたしたら生主さん、免許ないから足になってほしいのかも!


 ところが、十分後電話が来る。


「ほんとにごめん!行けなくなった!」

「えぇぇええええ!」


 別に構わないけど…私はどうすれば……?。


「他の人は来るみたいだけど…どうする?」


 生主さんが来ないなら行く必要も無いんだけど…好奇心が勝った。


「とりあえず、行くだけ行ってみるわー」


 研修室のある建物に着くとキングから電話がきた!


 今度は何っ?


「もう着いちゃった?」

「着いたよ!」

「いや、実は最終的に人が集まらなくて……」


 なんとも言いにくそうに言うのである。


「で、主催者はそこに来てるんだけど、伝えてくれない?」


 はぁ?なんで私が!


 しかし、オフ会イコールドタキャンは付き物である。

 私も私で感覚が麻痺している。


「とりあえず、みんな来ないって言えばいいんだね…」


 私は電話を切り、研修室のドアを開けた。


 え……………。



 そこにいたのはナイト君であった。


 んん?


 もしかして、オフ会は嘘?

 2人きりになるように嵌められた?


「なんかさ、今電話あって、みんな来れないらしいよ!」


 ナイトは「ふーん」と言うと、持っていたコピー用紙にひたすら何か描いている。


 携帯電話に保存してある画像を、一心不乱に模写。


 せっ、聖闘士星矢だ…!


 ナイト君は元々喋らない。

 私も特に話題は無い。


 何より、ナイト君も会話をする気がなさそうである。


 気まずい……どうしよう。


「生主さんに誘われてさぁ、私もスケッチブック持ってきたんだけど…」


「………?あ、どうぞ。描いてください」


 そ、そういうもんなのか。


 無言オフ絵描きバージョン……?


 そもそも、参加者は何人いたのかも謎である。しかし、それにしてはナイトは盛り上げようともしないし、完全に私は空気である。


 スケッチブックに元々描いてあった絵をグリグリしながら、無言の三十分。


 つ、辛い!

 苦行だ!


「だ、誰か呼ぼうか?」

「……別に要らないよ」

「キングに人呼んでもらおうか?」


 するとナイト「絶対嫌だ」と言う。


 おぉ?なんだなんだ??



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