買い物依存症VS躁転散財

紗代と私

 市内、しかも、私の家からたった3キロ先に24歳の女性がいた。


 名前は紗代さん。


 mixiで発見。

 日記などを見てたんだけど、どうも住いは近いようだ。

 うわぁ、多分この人めっちゃ近所だわと思いつつ、日記とプロフィールをガン見。


 日記には今日買ったもの、等が綴られていた。

 にしても、随分ハイペースな購入頻度である。主に洋服や靴などである。


 そういう私も、人の事言えないんだよね。


 21歳になったばかりで退職。

 その後、躁転した後買ったものは、実は以下の通りである。


 絨毯×2

 バイオリン1台

 トランペット1台

 クラリネット1台

 カーテン一式

 アンティーク家具類数々

 新車(軽自動車)ローン

 PSP初代2台目

 積みゲー各種

 オーブンレンジ

 ゴスロリショップで「ここの棚の全部くれ」2回


 などである。ニートである。


 それ+当時は喫煙していた為煙草代金や、オフ会の会費、通院費、税金など、生きているだけでかかる出費である。

 全部、勤めていた時、忙しすぎて浪費出来なかった金なだけで、そもそも給与がいい会社ではなかった。


 3桁だった貯金など、もう50を切っていた。


 もう、止まらない!


 紗代のプロフィールの一言。


「一緒にショッピングできる人募集中!」



 行く行く!


 早速、返信が来た!


「よろしく、じゃあ今度の水曜に」



 ウッへへ、若いオナゴとショッピングじゃあ!

 何故、水曜日?

 だって私達ニートだし!


 紗代の家庭は所謂金持ちである。

 一人娘で、戦いの資金は父上が四次元ポケットから出しているらしい。

 そう、女のショッピングは戦いである。


 車も高級車。


「お待たせ!」


 女の言うポッチャリって信用出来ないよね?だからハッキリ言う。

 彼女はふくよかである。


 しかし、誰でも1度は経験あるだろう。欲しい可愛い服だったのにサイズがなかった、とか。

 でも、紗代はお洒落で奇抜であった。

 ピチピチなのか露出なのか分からない時もあったが、凄くセンスもよかった。


 とりあえず、県内のデパートを数軒はしごする予定だった。


 口も悪いし、金使いも荒いし、男癖悪いし、もう欠点言ったら限りがない。

 でも、思考は極めて常識人で、何より金持ち特有の品の良さがある。下品な振る舞いはしない。常に(体型以外)自分磨き!


 私は洋服の趣味が違ったが、彼女は機嫌よく一緒に付き合ってくれたし、興味がなければハッキリ言う。私あっち見てくるねって。

 無理に合わせない!

 後腐れも無く、女特有の湿っぽさもない!気を使わなくて楽。


 正直、私は彼女の奔放ブリ、すぐに虜になった!

 私が兎耳帽子を選べば、紗代は猫耳がいいともハッキリ言うし、紗代が体型を気にすると私はぶっちゃけデブだし、思いっきりギラギラの着ようよ!

 などと、アホな事を話しながらゲラゲラ笑いショッピング。


 昼は気にせず高カロリーな物を躊躇いなく食いまくる!


 ただ、彼女は酒、煙草はやらないようだ。


 まぁ、デパートん中で煙草吸うなんてことはないし、彼女の車が禁煙でも全く気にならなかった。おしゃべりに夢中で煙草の事なんて忘れていた。


 彼女は5日に1回私を誘ってきた。

 洋服1着1万円としても、1月に飲食代も含めたら…。


 貯金もないしなぁ…。


 19歳の頃の彼氏が借金まみれだったのだが、返済に随分苦労した。取り立てに怯え、逃げるように債務整理して、ひたすら娯楽を我慢していた。

 私は無理だわ!

 あんな生活、多分、次の鬱期間が来たら、マジで旅立つ。

 躁転しててここで借金をこさえる方も多いと聞く。しかし、そんな経験が私を踏みとどまるきっかけになってくれた。


 よし、じゃあ、仕事しよう!


 紗代はニートだからいつでも暇だし、大丈夫だろう。人の多い土日にショッピングしたくないから、平日休みの会社がいい。


 そして私は再び、やめた会社と同業他社に就職。

 仕事に復帰し、親もホッとしていたようだ。

 浪費家になっていることも知らず…………。


 紗代の家に行くことも多かった。


 私の家は祖父母が動物嫌いのため、何も飼えない。何より、私が鬱期間になったら世話が。やっぱり飼えない。


 紗代の家には猫が2匹いた。

 抱っこ嫌いの猫だったが、もう側で見てるだけで幸せだった。

 家に行くといつもおばあさんがケーキを運んできてくれた。


 しかし紗代は自室には絶対私を入れなかった。

 防犯などではない。


 実は、5日に1回(私は4勤2休である)買い物に行き、その度に紗代は両手いっぱいになるほど服を買う。

 だが、その買った服を着ているのを、1度も見ていない。

 試着している為、サイズが合わなかった訳でもないだろう。


 うーん、積みゲーならぬ、積み服?タンスの肥やし?

 だとすれば、相当やばいんじゃないか、などと思えてきた。

 紗代の買い物はこういった感じである。


「これかわいい!」

「いいね!ほかの色もいいね!」


 普通はここで「どっちがいいかな?」である。

 紗代の場合は、


「なら、どっちも買うわ!」

「いらっしゃいませ!お客様、こちらのお洋服にはこんな靴お似合いですよ!」

「じゃあ、それも」


 または、このパターン。


「いらっしゃいませ、ごゆっくりご覧下さいー」

「あなたイケメンね!ノルマとかあるの?」

「あぁ、えっと……(困惑)」

「いいわ!私に似合う服を全身見繕って持ってきて!買ってあげる!」


 これは、完全に…………少なくとも、普通の買い物じゃないよなぁ。


 でも、彼女の(父の)お金だし、私が口出さなくてもね…。お金持ちってみんなそうなのかね…。


 そんなある日の出来事である。

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