しんだん!

なんかやばいぞ!

 もうそろそろ22歳になる。

 薄々、自分でもわかっていた。


 あんなにエネルギーに満ち溢れていたのに…オフ会も夏まではハイペースに盛り込み、家に居ることが少なかった。

 ワイワイオフのあと、秋くらいから家に居ることが増えた。一通り遊び回り、気が済んだだけだと、自己完結していたが、どうも違う。


 そう、鬱期間の始まりである。


 この時も、私はまだ双極性障害だとは知らない。


 日に日にテンションが盛り下がる。


 携帯電話はバッグに入れっぱなしになり、パソコンを立ちあげるのもめんどくさい。そもそも意欲がない。

 モンスターハンターも行き詰まったまま放置。


 風呂に入る気力もない。

 トイレと自室を移動するのみ。

 親が飯を持ってくるが、全く味がない。粘土を食べているよう。あれほど大食いだった私が、今や二日に一回やっとこそっとこ1食食べる。

 とにかく眠い寝ていたい。眠れなければ睡眠薬。とにかく起きて居られない。


 連絡が取れなくなったのを心配して、元同僚が家に来た。

 喋れない。


 見るに見かねた母が私を、私が行っていた病院とは違う病院に連れていった。


 治ったと思ったけど、再発した。

 薬を飲まなくても大丈夫だったから通院を自己判断でやめた。

 でも、本当に治った筈なんだ!

 あんなに楽しかった夏!



 医師が告げる、新しい病名。

「双極性障害ですね。初期段階では鬱病と誤診されやすいんです。躁転すると通院をやめてしまう方が多いので、鬱病だと思われ続ける患者さんも多いんです」


 そうか。

 私は、元々根暗でリア充じゃないしな。


「とりあえず、お薬出しますんで」


 これが再び始まる災厄の元となる。


 通常、双極性障害の治療に使う薬は「気分を一定に下げる」薬である。


 下げるとは言っても、鬱まではいかない、そんな薬である。


 その医者で出されたのは、そのあたりの薬と、少し鬱気味だった為、気分を上げる薬を多少出された。

 入院の話も出たが、必ず来週も私を病院に連れてくると母は約束をし、再び自宅へ戻る。




 1週間後。

 母は何度も娘に電話をする。

 通院日だと言うのに、自室にいない。

 あんな状態だ……もしかしたら今度こそ命をたってしまうんじゃ……。


 携帯電話のコール音。

 しばらく、娘の携帯電話は放ったらかしだったはずなのに。


 何十回もコールし続け、ついに娘が出る!


「あ、お母さん!?お母さんだ!」


 ベッドから起き上がれないほどであった娘が、ものすごい勢いで電話に出る。

 明らかに様子がおかしい。


 娘の周りには誰かが大勢居るようだ。


「うちのオカン!」


 娘のそれを最後に、ゴソゴソと音がする。


 今度は何!?


「うぇーーーぃ!お母さんうえーーぃ!」


 知らない男女が代わる代わる電話で挨拶(?)をしてくる。


 娘に出された、ホンのちょっと気分を上げる薬。アレが効きすぎて一気に躁転したのである。

 この日を境に、母はインターネットで真面目に精神科を調べ始めた。


 ごめんオカン。

 そして、私も全くこの時のことを覚えていない。

 気が付いたら年が明けており、誕生日も過ぎていた。


 よし、行くぞー、オフ会行くぞー!!




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