キングの城

 パーティー当日。


 最寄り駅でシノと待ち合わせ。

 事前にキングの仲介で、シノと連絡先を交換していた。


「俺、超楽しみ!」


 おぉ、散歩に行く子犬だ!

 満面の笑み!

 ニッコニコ!

 お前可愛いな!


 やがて送迎車が現れる。

 いつもキングの側にいる、あの寡黙な男だ。まるでナイトの如く。

 キングが助手席に乗り、ナイトが運転。


 シノと私は後部座席に乗る。出発。


 しばらくすると、家々も途切れ、田畑や牧場が見える。


 その先にあるのは一軒。


 小高い山の雑木林に囲まれた日本家屋。

 ほかは、蚕をやってたような作りの建物。

 蔵の数も凄い。

 完全な地主臭。

 スゲェ……。


 通されたのはその元蚕業の作業場である。

 木造で一階は農作業具置き場。

 2階はテニスコート程あるんでないだろうか。

 改装されており、綺麗に……。


 綺麗と言うか…、完全にお店状態だ。


 絨毯貼りの室内にデカいスピーカーのシアターがある。奥には業務用冷蔵庫とバーカウンター。広々としたスペースにソファ席。


 う……うちでこんな事したら電気代の地点で大目玉喰らうよ。

 ま、また場違いになる?私。


 しかしそこにいたのは、前回と雰囲気が違うっ!いや、違いすぎだろ。


 一人、脂ギッシュなおデブが寄ってくる!


「マジ、ゴスロリ!」

「ヤベェ、ヤベェ」


 お……オタク集団!!!?


『人選変えたんだ』と言ったキングのあの電話。

 つまり、私はここにカテゴライズされた訳だ。

 クソっ、間違ってない!

 誰にも言ってないけど、私は腐の上にモンハンとときメモをこよなく愛している。


 今度は女性が側に来る。


「こんばんはセイユさん、私、ニコで生主してます!」


 えぇ?ちょっと興味ある。


「どんな事してるんです?」

「ラジオですね!あとは友達とラジオドラマみたいなこともしててー」


 そのドラマメンバーと思われる男女が手を挙げて軽く会釈している。


「ゴスロリではないけど、コスプレは好きでコミケにも行きますねぇ」

「うわぁ、羨ましい…私も行ってみたいんですけど、土地勘ないし不安で」

「面白いですよオススメです」


 シノはおデブに捕まってる。

 今どきのゲームの話で盛り上がっている。


 あ、ちょっと一安心。


 それにしても、キングの交友範囲ぱねぇっす。


 カウンターでは酒を出していた。


 スポーティな大人の女性と言う感じのタイプである。


 冷蔵庫から市販のカクテルなどを注ぐだけだが、ちゃんとレモンとかグラスにさして盛り付けてくれる。


 でも、なんかこの人見た事あるような……うーん、思い出せない。


 そんなこんなで四時間はあっという間だった。あー、少年誌読むのすっかり忘れてたぁ。

 相変わらずキングは不在。


 休憩スペース(別棟)に行くと、シノとおデブはそこで漫画読みをしていた。

 今回はナイトもいた。キングのお付きって訳でもないんだな。


 私は生主さんと連絡先交換をすると、彼女のラジオメンバーに駅まで乗せてもらい帰宅した。

 シノはナイトの運転でおデブと共にネット喫茶にいくと言っていた。大丈夫だろう。

 数日後、生主さんと電話でやり取りして一緒にカラオケに行くことになった。


 生主さんは免許がないので自宅周辺のコンビニまで迎えに行き、そこからカフェでサンドイッチとケーキを食べ、おしゃべりする。


 そこでキングの話が出る。


 キングは元々他県のキャバクラでボーイをしていたと言う。

 辞めた理由はよくわからないが、独立したママさんがいて、その人とは今も仲がいいようだ。

 地元に帰ってきてから、例のパーティーオフを開催していると言う。

 ナイトはキングの幼馴染みらしい。

 キングが地元に帰ってきた際、引きこもりになっており、あぁして自分と行動を共にして、家から引きずり出しリハビリしているという。


 パーティーの目的は不明。


 私が最初に行ったカラオケ屋。

 まずはあそこで参加者を見る。

 ホスト役をしていた者とドレスアップの女性の何人かがキングの側の人間であったらしい。

 新参者や、出会い厨に関してよく観察される。

 主に売人、酒乱、過度な出会い厨などは、そのままあの空間に残る。

 問題無ければ、気の合いそうな者だけを場所ごとに集めてパーティーをすると言う。


 凄いフットワーク。

 それで1度に何箇所も開催してるんだ。


「揉め事もないし、常に運営側がいるからキングがいなくても廻るんだよ」

「前回、自宅の時いた?」

「バーカウンターにいた女の人だよ。アユミさん」


 えぇっ!?


 あのスポーティギャルお姉ぇ様がアユミさん!?

 カラオケ屋の時に私に付いてくれたオッパイの人だ!

 うわぁ、気付かなかった…。あんなに気を使ってくれたのに。

 後でキングに言っとこう。


 その後、生主さんとカラオケに行ったが、この人めっちゃ音痴の人だ……これは手強い!

 3時間歌い、帰るときちょっとゲソっとした。でも、めっちゃいい人だし、また誘う約束をして別れた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る