mixiオフ

美味しいお店巡るサークル

 なんだか、あれだな。


 喋ったこともない奴に助けを求められ、バンドマンの修羅場に立会い、知らないオジサンの愚痴聞き役になる。


 楽しいんだけど、濃いんだよなぁ…。


 とは言え、男を探してる訳じゃないので、リア友の合コンは全て蹴った。


 そんな事をうさぎくんに相談すると、mixiはどうかと提案された。

 mixiは昔、紹介制だったんだよね。

 私は早速、うさぎくんに紹介してもらい、コミュニティを吟味する。


 出会い厨に関してはもう、あれはどこにでも湧くのでそこは問題じゃない。


 そうだ!


 最近全然お酒飲んでない!


 私は無類の酒呑みで大食いである。


 そこで候補に出たのは「県内の美味しいお店をひたすら巡る」という趣旨のコミュニティである。


 参加者のプロフィールは……見れん。

 入らないと、見れない。


 うーん、入ってみて、しばらく探り、プロフィールや日記を見て行くかどうかは後で決めよう!


『初めまして!神木です(´°ω°)ノシ20歳も過ぎたので、そろそろいろんなお店知りたいですorz』


 なんか頭悪そう。


 まず連絡してきたのは、主催者男性ではなく女性であった。


 彼女の名前はミサである。


 プロフィールの後ろ姿写真を見ると、モテるちょいポチャと言う感じで25歳である。

 日記には、その日甘い物食べに行ったとか、残業だょうぇーん、とかまぁそんなタイプである。


「初めまして!(*^。^*)ミサです!(^^♪次は7月の土曜です(^ε^)-☆!!来れますか?(^0^)/」


 うぉぉ、やっぱ私みたいなのとは顔文字が違うな。

 ショボンとかブーンとか使わないね。


 取り敢えず、行くと伝える。

 何かあった時のために、全てうさぎくんとナルシくんには報告する。


 参加者は全員で7人。

 女は3人。男が4人。

 私を入れて8人。


 コミュニティに入ってからも、主にミサさんを中心に話が回る。特に自己紹介もなく、みんな淡々と次の日取りだけ確認する。

 意外と真面目に飲み食いしてんのか?

 もしくは書けないようなヤバい事をしてるとか。



 私は取り敢えず探りを入れるため、7人の参加者に個別に挨拶をしてみた。


 返信があったのは他の男2人と、残りの女性陣。

「そんなに緊張しないで!」

 といった感じである。


 でもなんか嫌な予感する。


 夏のゴスロリは暑い。

 化粧も落ちるし、なるべく薄着でゴスロリを表現しなきゃならん。


 何より苦しい!


 私は今回、いざ酒池肉林!会費を払い食い放題飲み放題をとことんしてやるのだ!


 極めて普通のブラウスとただの黒いスカートをチョイス。大丈夫。今回はリア充の振りする。ジャラジャラとブレスレットを付け、リスカ痕を隠す。

 メンヘラコミュニティも入っていたが抜け、オカルト話もしてない。


 若干の無個性感に違和感があるが、楽しかったらまた行きたい!

 なんせ今回はリア充女子がいるのだ!

 泣き出すオジサンじゃないのだ!


 そして夕方5時半、居酒屋到着。

 同時にうさぎくんにも一応連絡。


『今着いた!なんかみんな今のところいい人そう』

『把握。何かあったら、とにかく断れ』


 まず、席につくと私は新参という事で真ん中に座らされた。


 掘りテーブルのお座敷でミサがテーブルを挟み正面に座る。その隣に、男性1人。男性を挟んでモモさんと言う女性が座る。

 窓側が、ミサ、男、モモ。

 私側が男、私、男、女、男。


 まずは、ミサが今日の段取りと、軽い挨拶をする。

 ミサはもう想像通りのタイプで、女子力高いですタイプである。私は一人っ子で面倒見も悪く、加えて合コンでもないし、こういう時は存分に甘えるのである。

 ナマケモノの私のためにも、存分に女子力アピールしてくれたまえ!


 続いて、私の紹介が入る。


 なんか、会社みてぇ…。

 めんどくさ。


 そしてズッと気になってたんだけど、なんでモモは私にガン飛ばしてるん?


 あまり目を合わせないようにしよう。


 モモは年齢非公開だけど、ミサより少し上かな?

 間の男性は28歳だそうだ。


 これは考えたくない!

 けど、私の右隣の男2人と女を見ていると……あ、半分以上出会い厨の集まりだわ…。

 うぅ。


 と、そこへ、ずっと無言だった左の男性が声をかけてきた。


「神木さん、楽しんで行ってよ。

 これから面白いモノが見れるからさ」


 お……面白いモノ?


 男性はジョリさん。今年36歳だそうだ。

 食わないで飲むタイプで、喋らない分ペースが早い。


 面白いモノってなんだ?

 まさか、ブツの取引?

 ここで乱れるとか!?


 1時間過ぎた頃。

 私は取り敢えずビールを頼むと、コッソリ注文していた焼酎をビールに入れる。


 だって、誰も食事してないし、誰も酒呑んでない。


 流石に新参者でガンガン注文しにくいよ…。

 でも、呑まねぇでどうすんだよ。


 そこへジョリが話しかけてきた!


「ほら、ほら、神木さん!早くっそろそろだよ!」


「えぇ?」


 もう私の正面にはミサはいない。

 ミサとモモに挟まれていた男性は壁際へ追い詰められている。


「はっきりしなさいよ!私とミサ、どっちがいいの!?」


「はぁいー?そんなのウチに決まってるしぃーモモさんおかしいんじゃないの?」


「低学歴に言われたくないし!っつーか、いつまで黙ってんだよ!」


「この度胸なしが!」


 おい待て。


 お前ら、その男好きなんだよな?


 なんでちょいちょい殴って蹴り入れてるの?


 しかも、男もうんともツンとも言わないし、満更でもなさそうな面である。


 ジョリが解説をする。


「面白いでしょ!」と笑う。


「俺はアレ見んの面白くてさぁ!毎月あの3人が予定ない時見計らって企画すんだよ。若いっていいよね!

 女は怖いよ…はは。アレを見ながら酒飲むのクセになっちゃってさ」


 まぁ、女2人が1人の男を取り合い、挙句男があの優柔不断である。面白いとは思うケドも、ジョリさん、あんたの趣味も大概だよ…。


 3時間経ち、お開きになった。


 ジョリと私以外ほぼ全員シラフである。


 こんな喧嘩腰の飲み会をもう2年も毎月やってるのか…。

 あの男は一体何なの?断るのか、付き合うのか…なんで二年もあって決断できないんだ?


 主催はジョリである。

 なんと悪趣味な。

 ちょっと気に入ったぞ!


 でも、まだちょっとスパイス足りないよねぇ…。

 あの3人の中になんかこう、飛び抜けて美男か美女が入って来れば、よりややこしく…………うぁお、もしかして私だったのかその役。


 だからモモさん睨んでたんだ。

 でも、私はそんな素振りなかったし、男の方も私には興味無さそうだったしな。


 ジョリの計画は破綻したのか。


 ブスですみませんね…。

 興味なくてすみませんね。


 程なくして、ミサ、男、モモは会計後別行動となった。


 残った女性はマリと言う今どき女子である。私と一歳違いの22歳。口が悪い印象だが、害はない。

 側に居る男2人は彼女の…………ホスト状態?


「ンもーマジでウザったかったぁ。飲み直しましょ!」


 私もまだ全然呑んでない。

 即OKした。


 二件目は隠れ家風の居酒屋であった。

 料理は量が少ないけど、美味しい!


 マリが隣に座った。


「今日はびっくりしたでしょ!いつもあの3人そうなの」


 心底参ったように頭を抱えていた。


「だから早い時間に一次会をその辺の居酒屋で済ませて、二件目こーゆーいい所に来んのよ」


 なるほどねぇ。


「コミュニティから退会させられないんですか?」


 言ってみてから、気づいた。


「ジョリがあーゆーの見るの好きなんだよ…変人だよもぉ」


 ごめん、私も見てる分には嫌いじゃないけど。


「まぁ、あたしはあの2人がいればいいからさ」


 マリのお財布達か…。


 私はトイレから戻ったジョリに再び身柄を確保され、マリは取り巻き共の男の中へ戻った。

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