カラオケオフ会2

 そんな事を考えていると、モブ1が突然立ち上がった!


 んんっ?!

 こいつこんなにでかかった?

 ずっと隅で話していたから分からんかった。それに何より、なかなかいい男ではないか…。


 モブ1がマイクを握り、ゆらりと前へ出る。モブ2が「あ、あと、あいつ彼女居ます」と私に言う。

 そんな気ねぇわい!失礼なやつだな。


 そんなこんなで、モブ1が歌い出す。


「うおぉおおおぉおぉ」


「うまぁああいぃぃ」


 ひゅー!!ぱちぱち!


 す、凄い歌唱力!

 うまいだけじゃない、ちゃんと自分の持ち味を活かしてる。歌うまい人って、ほんとに自分の色に染めるよね………いいなぁ。


 マイク君じゃなくて次もこいつ歌わねぇかな、などと思いながら、ふとマイク君を見ると何故か泣いていた。


「うぅう…………」


 何でっ!!?!


 なんで?

 感動したの?

 モブ友人の歌に?

 わかった!記念日か!

 お前らあれか、「お前のために歌うぜ!お前の好きな曲」みたいなめんどくさい奴か?


 いや、だがしかしマイク君なんか顔険しいぞ………?


 今度は何っ!


 モブ1が歌い終わると、次の曲は入っていなかった。


 モブ2君が前へ出る。


「……と、言うわけだ。マイク君」


 いや、どう言う訳だよ…。

 一人離れて丸椅子に座っていたマイク君がガバっと顔を上げ立ち上がった!


「でもヴォーカルは俺がやる!」


 もしもし亀さん♪ウサギ君と私を置いてかないで!


「実際、なんの共通点もない人間を用意した。

 お前が女性ならって言うから女も呼んだ!」


 おい、待て。


「でも、反応一緒じゃねーか!ヴォーカルはモブ1でいいんだよ!」


 えっ!!これってそんな集まりだったの!?


「聞いてくれ、俺は歌が好きなんだよ!」


「でも、下手じゃん…」


「そ………そうかも……しれないけど……」


 やがて無言。

 静まり返る室内。

 カラオケのディスプレイで新譜が流れているだけの室内。

 時折、酔っ払いが廊下をうひょーと叫びながら通過していく。それに比べてこのルームのテンションよ。


 た……耐えらんねぇ。


 だが、勇者現る!


「ちょっと待って。俺達はオフ会に来ただけだし、専門的な知識は無いよ。当然好みもきっと人それぞれ違うと思う。

 このオフ会はバンドの都合であって、俺達参加者は全然楽しめてない!」


 ウサギ君である。

 そうだそうだ!

 私にも歌わせろー!


「その代わりに、このオードブルを貰って帰っていいですか?」


 えっ!!!!?

 何?うさぎくん何の話してんの?


「えと………あ…!」


「はい!……どうぞどうぞ!」


 そういえば、うさぎくんはメニューをじっくり吟味していた記憶が!

 オフ会の有効利用術!!?


 ウサギ君が持参のタッパにオードブルを詰め終わると、私とナルシ君、初対面組の三人は飲み直しに出かけたのである。


 ウサギ君とは後に良い友人になり、度々遊んだが、彼の家は母子家庭で下に四人の兄弟がいたのである。

 オードブルは明日の昼飯にすると言う。


 頼もしい長男よ。最近やっと全員巣立ち、自分も結婚したようだが、ここでは割愛する。

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