メンヘラオフ会2

 カラオケボックスへ移動し、まずは歌わずご飯を食べ、自己紹介をする。


 名前(偽名)と、病状と、好きな話題と言った感じである。


 由佳さん、私、大学生と進みMさんの番になる。Mさんはひたすら喋る、喋る。

 居住地を持たない彼女の破天荒な生活話である。店で喧嘩をしたとか、壁をよじ登っていたら警察に通報された等。武勇伝系の話だろうか、だが結構話慣れしている感じだ。聞いていて面白いのだが、あれ?高校生男子が震えてるぞ…。


「大丈夫?」


「スミマセン……人と、は、は、話せないんです」


 よく来たなぁ。頑張れ少年。

 しかし、Mさんの話は止まらず、少年の自己紹介は忘れ去られた…。


 カラオケへ移行する。

 由佳さんと私の好みのジャンルは似ていた。Mさんは大学生へターゲットを狙い定め喋り続けている。ODの胃洗浄の話すんな、そいつ引いてるぞ。ってか、ザマミロ出会い厨。

 続いてカラオケは少年のターン。


 おぉ!!

 すげぇ歌うまーーー。


 さっきまでの緊張どうした。

 そう言うものなのか。まぁ一安心だ、由佳さんが曲をリクエストしている。ちょっとずつ打ち解けている…………いや、だめだ。

 やっぱりガチガチだ。話すの苦手なんだな………。


 フリータイムで五時間利用し、解散時刻となった。


 まず、最初に徒歩で帰宅の少年が去る。

 続いて、Mさんだが、帰りはどうするんだろう?

 来る時は一緒だったけど、私は少し駅前でショッピングしてから帰ろうと思う。

 その旨を伝えるため、少年を見送った後Mさんの所へ行った。

 すると、何故かMさんと大学生が揉めている。


 今度は何っ?


「ねぇ、私と遊び行こ!ホテルでもいいよ」


 うぉぉ、Mさんが大学生を口説いとる。

 と言うか、口説いてんのかそれ。

 く……口説くのに何故、胃洗浄のゲロの話したんか……。


 カラオケボックスのロビーで、三人はそんな話をしていた。

 私に気付いた由佳さんは「それじゃぁ、私たちは行きますか!」と足早に私のそばへ来た。


 まぁいいか、由佳さんと駅まで行って今日はもう帰ろう。


「じゃ、またいつか機会があったらいいですね!今日は失礼しますね」


 私が言った時だった。


「俺は、神木さんとホテルに行きたいんです!」


「!!」


 おい、出会い厨が。

 私を巻き込むんじゃねぇ!


「え……??」


 だいたい、大学生君はずっとMさんにかかりきりで結局、私とはなんも会話なんぞしなかったぞ?


 ははぁーん 、把握。

 高校生にこんな姿見せられないし、由佳さんは未成年であるし、Mさんの攻撃防御には私しかいないんだな?


 目がアウアウしてるもんネ。


「大学生君は神木さんとエッチしたいんですね?わかりました!では三人で。

 ダメですか?」


 私が駄目だよ。何言ってんの。

 こりゃもう、おさまんないでしょMさん。

 今日の寝床もないって言ってたしなぁ。


「では私はこれで、あとは三人にお任せしますね」


 あ、由佳さん逃げた!


 取り残された三人。

 修羅場。

 しかも、全然初対面の三角関係でも何でもない。


 解決策?

 例えば「Mさんもういいでしょwなんかお茶でもしませんか?あ、今日うちに泊まります?」とか言ってみる?

 家族に出禁にされた挙句、何度も通報されてるメンヘラちゃんを?

 うーむ、ちょっとリスキーだ。


 いやいやいや!

 ちょっと待って。


 そもそも、こいつは出会い厨だよね。

 大学生君も悪くない?

 普通のオフ会ならわかるけど、これはメンヘラオフ会だよ。

 メンヘラちゃんって、多いんだよこういう子。


「大学生君と全然、話さなかったですし、いきなりホテルとか。無いですよ」


 うむ。私は悪くない。

 大学生君は、蟻地獄に落ちた蟻の如く、Mさんに羽交い締めにされホテル街へと消えていった。


 オフ会って超面白い。

 よしっ、帰りの電車で次のオフ会探そう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る