私が鬱病になった話

 これはちょっと書こうかどうか迷った話なのですが、今回のノベプラさんでやっているフェアが「心と身体」と言うことなのでやっぱり「心」についても触れなければならないかなと思い、書くことにいたしました。


 だからと言ってあれです、鬱病だから可哀そうでしょとか、優しくしてねとか、作品に対して批判はよしてねとか、そういう変なアピールをしたいわけじゃないです。


 言うと余計そんな感じするけど、そういう意図はないのです。だからこれを読んでも、変わらず接してくださいな。


 それに私は専門的なことは分からないので、私が書くのはあくまでも鬱病になった経緯……と言うよりも予兆とか、何がどうして鬱病だと診断されたのかの経緯と、今は結局どうしているのかとかそういう話です。


 あくまで私が書けるのは、私の実体験のみです。


 これを読んだから鬱病が治るよとかそういうものでもないです。結論から言ってしまえば、私みたいな適当な人間でも鬱病にはなってしまうんだという事です。


 深刻な話をする気も無いため、気軽に読んでください。


 そしてちょっとでも自分の中で心当たりのある方は、きっかけにしてみてください。。


 私が最初ちょっと変だなと思ったのは、身体の中心部分、ちょうど鳩尾の下部分に痛みと言うか、変なモヤモヤとした感じが常にある状態でした。


 その感じ自体は、たまにあったんですけどすぐに解消していたし、今回もそうだと思って特に気にも留めて無かったんです。


 だけど、その感覚は私の中に解消することなく常に残っていました。


 特に朝起きるとその感じが強くなって、仕事とかしていると収まってきて、夜にはほぼほぼ解消して眠れていたので……それが何かの兆候だとは特に思いませんでした。


 それからある日、やっとこさ自覚症状と言うか、明らかにおかしいと思えることが起きました。


 それは食事の時間です。


 腹が減らない……。正確に言うと腹が減ってるけど、食事が喉を通らなくなりました。ほんの少しは食べられるけど、満腹になっていないのに、それ以上食事が食べられないんですね。


 無理矢理食べようとしても、全然食べられない。


 流石にこれは私にしてはおかしいなと思って、素人なりにではありますけどネット上で色々と私に出ている症状を調べて見ました。


 最初は内科に行く必要があるかなと思ったんですけど、どうもしっくりこないんですね。


 それから何日か調べて調べて……もしかしてこれ? って言うのが鬱病の症状でした。


 当時は仕事がとても忙しくて、プレッシャーとかそういう諸々が半端じゃなく襲ってきている時期だったんですね。


 ただ、誤解なきように言っておきたいのは。当時の職場でパワハラ的なものは何もありませんでしたし、理不尽な先輩とか、残業代の不払いとかもありませんでした。だから心当たりは仕事の忙しさくらいだったんです


 でも、仕事の忙しさだけで鬱病になるの? と言う疑問がありました。


 なんとも変な言い方ですけど、私は割と適当な人間です。


 割と真面目には生きてはきましたけど。それでもたいして勉強もしてこなかった適当な人間です。


 それに世の中の鬱病になる方は、自分自身よりももっとつらい思いがしている方で、忙しいとはいえ、他の方から見てきっと甘い環境にいる自分が鬱病になるのか?


 そう考えるのは、鬱病で苦しんでいる人に失礼ではないか?


 こんな程度で心療内科に通っては恥ずかしくないだろうか?


 それが当時の正直な疑問でした。


 でも思い当たる症状がそれしかないし、食事もろくに取れずに、モヤモヤした変な気分が全く抜けずに、この気分のままで過ごすのは嫌だなぁ……と思いまして、


 心療内科に通う決断をしたのです。


 そして、当時の仕事場に近い心療内科に電話をしてみたんです……が……。


 この時に私が実に自分の考えが甘いと感じたのは、歯医者の予約、内科の予約みたく当日すぐに受診できるだろうという思い込みでしたね。


 結論として……病院は1か月先まで予約で埋まって待ちの状態でした。


 当時の私はそれをすごく驚いたものです。


 10年位前の事ではありますし、今なら納得できますが……驚いたものです。


 ちなみに今も病院には通っていますが、当時とは異なる病院に通っています。


 一度、転職で東京に行ったりして、病院を変えたり、今の職場に変わった時に一時的に病院に通うのを止めたりしていたので、もうちょっと通いやすい病院に切り替えたんですね。


 今通っている病院についても、最初に電話した時は予約は2週間先までいっぱい……と言うような形でした。


 昔より病院が増えて来ているとはいえ、まだまだすぐに診察を可能なまでの体制にはなっていないようです。


 さて、話が逸れましたが病院への通院です。


 正直な話、一ヶ月もこの気持ちのままで過ごす……と言うのはかなり厳しかったです。甘く見て病院にすぐ電話しなかった自分自身を呪ったというか……ひどく後悔しましたね。


 それから、職場近くの病院を片っ端から電話してみましたけど、オフィス街近くの病院は全て最低でも一か月待ちの状態でした。長い所で二か月近く待ちの所もあったくらいです。


 そんな中で、職場からほんの少し遠い場所にある病院だけ、二週間待ちで受けれると言ってくださいました。


 とにかくそこが一番予約まで短かったので、私は藁にも縋る思いでそこに予約を入れます。


 その間は、ネット上で「鬱病になった時にこうした方が良い」と言う記事をとにかく片っ端から見て実行してたんですけど……どれも私には合わないのか、効果はありませんでした。


 多分、それで対処できる方もいらっしゃるんでしょうけど、当時の私にば運悪くそれらの内容は合うものではありませんでした。


 そして周囲にも相談できず、親にも言えずに……精神的な苦痛の二週間を何とか過ごしました。


 周囲の人には食事量を減らしているのはダイエットだと言っておきました。


 当時から太っていたので、それで言い訳が通じたのは幸いですね。何が幸いするのか分からないものです。


 当時はとにかく、知られたくないという思いが強かったので、何とか悟られること無く受診の日を迎えます。


 そして仕事終わりに通された場所には……とてもいっぱいの人が居ました。


 私と同年代らしき青年や、年下に見える女性、年配のご老人等……様々な人が待合室にいました。


 待合室は凄く広く作られていて、とにかくリラックスできる空間を心掛けていることが良くわかりました。


 それと、意外だったのは決して待合室で名前は呼ばれません。看護師さんが、次に受診する方の元に来て、次診察ですのでこちらに来てくださいと、一人一人に声をかけます。


 完全に仕切ることはできませんが、プライバシーには最大限配慮している感じでした。


 それからしばらく待って私の番になり。私は先生に症状を告げました。


 先生は私の話を否定することなく黙って聞いてくれたのを覚えています。ときおり質問はされますが、それでも決して否定の言葉は言わず、私の話をよく聞いてくれました。


 そして、先生は私に優しく告げてくれました。


「鬱病の初期段階だと思います。初期ですので、まずは薬を飲んで様子を見てみませんか? 一番軽い薬を処方します。まずそれを飲んで、症状が軽くなれば、それを続けてみましょう」


 確かこんなことを言われた覚えがあります。


 どうやら私は、運良く早い段階で心療内科を受診できたので、話を聞く限りは重症化する前だとのことでした。 これで重症化してなかったのかと、軽く背筋が寒くなった覚えがあります。


 判断材料がどこにあったかは分かりませんが、先生は私とのやり取りでそう結論付けてくれたようです。


 休職するなら診断書を書くけど? とも言ってくれたんですけど、私は薬を飲んで仕事を続けることを選択します。先生は私のその選択も否定せず、尊重してくださいました。


 そして薬を飲んで様子を見ると……私の身体の中の違和感とモヤモヤとした気持ちは一日、また一日と軽くなっていきました。


 それから週に一回ほど通っていたんですけど、症状が軽くなると二週間に一回、三週間に一回……最終的には1か月に一回まで通う回数を減らすことができました。


 そのまま心療内科に通って仕事を続けていると……運命の日が来たわけですね。


 会社の倒産です。


 この時は、本当に心療内科に通っていて良かったと思いましたね。会社の倒産と言う不安の中でも、何とか平気になれましたから。偶然とはいえ、本当に良かったです。


 幸いなことに再就職はすぐに決まったのですが、東京に行くことになってしまったので病院の先生にお世話になったお礼を言って、東京に行くことを告げました。


 それから先生は、もうだいぶ症状も良くなって、薬の量も増えていないので通う必要はないかもしれなしけど、新しい環境に行くのであれば、通いやすい心療内科に通った方が良いとアドバイスをくださいました。


 そして紹介状をもらって……私は東京でも心療内科に通い続けました。そのおかげもあってか、東京では心身共に健康に過ごせまして。薬の量も増えることなく、今も一番弱いという薬だけで過ごせています。


 最後に先生に言われたのは、重症化される前に通ってくれて良かったとの言葉です。


 皆さん、自分は大丈夫と思ってなのか、通うこと自体に忌避感を持つ方が多いという事で……私はそれを聞いて、自分が最初に思ったことを思い出し、自身の浅慮を恥じました。本当に、知らないというのは怖いことです。


 そして私は今も、心療内科に月一で通っています。


 今では会社の信頼できる人間にはこのことを話しています。それでもみんな、普通に接してくれているのが非常にありがたい話で、仕事も色々と任せてくれています。


 忙しい時は本当に忙しいですが、それでも無理の無い範囲で、仕事をしていけています。……まぁ、休日出勤が連続する時もありますが、その分休みを分捕ったりと、時には会社で本音をぶちまけて怒ったりしながら仕事をしています。


 でも私が言いたいのは、心療内科に通ってでも仕事を続けた方が良いよとか、そういう事じゃないです。


 心療内科に通った結果、仕事を辞めて方が良いとなったら即座に辞めて構わないと思っています。


 これはあくまで私が選択した人生なので、あくまでも私にだけ適用される話です。


 私が言いたいのは、もしも自分の心がおかしいなと思ったら……迷わずに、早めに心療内科を受診してくださいという事です。


 それに、深刻になってから受診しようとしても……すぐに予約が取れないかもしれません。早め早めの予約は大事です。


 かつての私は、心療内科に通うのをどこか恥ずかしがっていました。


 私は専門医ではないので間違っているかもしれませんが、経験者としてかつての自分が思っていたことを言います。鬱病は自分一人で解決できることではありません。専門家に頼るのが一番だと感じました。


 今にして思えば、私ももっと周囲と話していれば少し何かが変わっていたのかもしれません。それを嘆いても仕方ないので、私ができるのはこれからも重症化しないよう自身のメンテナンスをしていくだけです。


 たまに……「最近の若い子は精神が弱い」と言う人がいるかと思います。


 もしもそんな人がいたらこういってやってください。


 30代後半のおっさんでも鬱病にはなるんだぞって。このエッセイを見せてあげてくださいな。


 ならないから強い、なるから弱い……そういう話でもないと思ってます。そこには個人個人で差があるだけです。


 そんなことを言ってる人だって、ある日突然、鬱病になるかもしれないんです。


 それでも早い段階で、きちんと専門家に相談すれば、私のように仕事を続けながら、趣味で物書きができるようになれるわけです。


 当時、あのまま心療内科に通わないことを決断していたらと思うと……正直、ゾッとします。


 たぶん、今こうやって何かをしていることも無かったかと思います。


 なぜなら、私はその気持ちがモヤモヤしている時は、好きなはずの本すら読めてませんでしたから。それでも初期症状だったというのだから、重症化していたら果たしてどうなっていたのか……。


 ともあれ、こうして私がここに書くことで、少しでもそういう心当たりのある人が動くきっかけになればと思います。


 無理は禁物。早期発見早期治療。これは身体の病気もそうですが、心の病気も同様ですよね。


 皆様が無理をすることなく、明日も笑えることを願っています。


 さて、心と身体のエッセイについては、明日で最終回の予定です。


 最後はちょっと、ポジティブな話で締めようと思ってますので、良ければ見て笑ってやってください。

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