第3話
「ん〜〜〜......、これで終わりっと!」
報告書の紙の順を確認してホチキスで纏める
これで今日の仕事は終わり。
帰る前に買い物して帰ろうっと。
何が冷蔵庫の中になったかなぁ......。
「ゆっいっちゃーん!!」
そう自分の名前を呼びながら後ろからハグしてきた。マキ先輩だ、隣にアカリ先輩もいる。
ブロンドのロングの髪が綺麗で胸も身長も大きいゴールデンレトリバーみたいな人がアカリ先輩で白髪で身長は少し小さいが胸の大きいチワワみたいな可愛さがあるのがアカリ先輩だ。
二人ともなんでそんなに大きいのか......。
食べてた物は同じ筈なのに......。
二人とも孤児院時代からの先輩で極東重工に入社してからも色々お世話になっている。
「マキちゃん、いきなり抱き付くのはどうかと思うよ?」
「いいじゃん別にー。それよりユイちゃんこの後ご飯食べに行かない?鶏肉が美味しそうなお店あったんだ!」
鶏肉......美味しそう.....。
「行きたいです!」
それを聞いたマキ先輩は歯を見せるように笑顔を見せた。
「よし、じゃあユイちゃんはその報告書上に上げてから来な!私達はロッカーの所で待ってるからさ!」
分かりました!、と返事をしてさっき纏めた報告書を持って課長に提出しにその場を後にした。
廊下に出て課長がいる部屋に入ろうとした時タイミング悪く室内から出ようとしていた人にドアをぶつけてしまった。
やってしまったと思い、声をかけようとすると
「これだから中層域以下の出身は....」
ぶつけた鼻を抑えながら忌々しそうに私を見て言った。
相手は重火器開発部門部長のアジラン・ケラーヒだった。
彼は上層域出身であり、開発における才能を上から見出され開発部門に所属した。
才能もあってか、たった半年で部長まで昇進し、数々の重火器、特に爆発物の開発を中心に功績を挙げている人物だ。
上層域出身もあってなのかプライドがとても高く、中層域、下層域出身の人はよく嫌味などを言われている。
彼は鼻を抑えながら鋭い眼光で私を睨んできた。
私は深々と頭を下げ、謝罪をしたが彼は舌打ちだけして早々にその場を後にした。
その後課長へ報告書を提出したが、課長からは少し怒られてしまった。課長曰く、もう少し落ち着きを持って行動をしろとのことだ。少し自分の行動に反省をしつつもマキ先輩達が待っている更衣室のロッカーへ向かった。
ロッカーで合流した後お店に向かってる途中でマキ先輩達にどうして遅くなったのかと聞かれ、アジランケラーヒ部長にドアをぶつけ課長に怒られた事を伝えると少し同情された。
「ユイちゃんも運が無かったねー...よりによってあの人に当てちゃったかー...」
今回は私が悪かったので課長に怒られるのは仕方ないとは言え、良い気分では無かったので今日の夕食でこの気分を晴らそうと思い普段より多めにご飯を食べようと決めた。
少しくらい大丈夫だよね...?
鶏肉だし太らないよね...?
そんな事を考えつつもマキ先輩達と談笑しながら歩いていると目的の店に到着した。
看板に大きな鶏の絵が書いてあり如何にも鶏肉がメインのお店だ。
入り口には赤い暖簾と温かみのある提灯が置いてある。店内からは空腹を刺激する甘めのタレの匂いが漂い、鶏肉を揚げているのだろうかパチパチと油の跳ねる音が聞こえてきた。
その情報だけで私のお腹がグウッと鳴った。
少し恥ずかしくてお腹を私は抑えたが、音鳴りは止まらなかった。
その様子を見たアカリ先輩が
「お腹空いたよね?じゃあはいろっか!」
そう、少し笑いながら言った。
マキ先輩の方を見ると既に口の端から涎が垂れていて今にも待てない様子だった。
やっぱりこの人は犬っぽいな...
店に入ると空腹を刺激する物が更に増えた。
客が注文した串に刺さった鶏肉が濃い目のタレで味付けされた物、油で揚げられ皿の上でもまだ油が少し跳ねている鶏肉の塊、その鶏肉の塊に白い具がゴロゴロ入ったソースがかけられた物、更にそれをおかずに炊き立てだろうか白米を口に運ぶ物....
この時点でもう空腹は限界だった。
アカリ先輩も空腹を刺激された様で目見開いて、空いている席を探していた。
席に着いた途端先輩達とメニューを見て直ぐにビールと「ヤキトリ」「カラアゲ」「トリナンバン」それとご飯を注文した。
まず注文してビールと一緒に「オトーシ」と言う物が出てきた。
内容は鶏皮を茹でて辛めに味付けした物だった。
最初に乾杯をし、喉を潤した後オトーシを口に運んだ。
少しピリ辛ではあるが風味の良い油と塩で和えていて、噛むと柔らかい食感がとても良くビールが進んだ。
オトーシが無くなったタイミングで最初に油の跳ねる音をさせながらカラアゲが出てきた。
如何にもジューシーだと言わんばかりに店内の照明を反射し、カラアゲが光っている。
同じ皿にはくし切りにされたカットレモンとマヨネーズが添えられていた。
皿には6個あったので互いに2個ずつ小皿に取りレモン、マヨネーズ、片方ずつにそれぞれ味を付けた。
まずはマヨネーズの方だ。
一口噛むとカラアゲ自体に付いている濃い目の下味が口一杯に広がった。
醤油、ニンニクの風味でビールがまた進む。
そしてマヨネーズがかかっている所をまた一口、濃い目の下味とジューシーな鶏肉の味にマヨネーズのまろやかさが加わりその味が口内に広がった。
ビールをそのまま胃に流し込むと中ジョッキが空になってしまった。
先輩達も空になってしまっていたので追加でビールを注文した。
ビールが来るまでの間カラアゲが冷めないうちに、もう一つレモンをかけた方を食べた。
カラアゲのジューシーさを損なわず、くどくなりそうな油を果汁でさっぱりとした味わいになった。
皆最後のカラアゲを味わっていると注文したビールとトリナンバンとヤキトリ、そして白米が出てきた。
店員からヤキトリについて説明があった。
どうやら鶏の部位毎に串に刺してタレと一緒に焼いた物の様で、今回は皮、腿、つくねの3種類だと言う事だ。
私達はまずそのヤキトリに手を付けた。
皮串を私は手に取り串に付いたまま食べた。
オトーシで出てきた鶏皮とは違ってタレと一緒に火で炙るとこによって出来たコゲがとても美味しい。
鶏皮特有の柔らかさがありつつも炙る事でパリッとした食感も生まれ飽きる事なく食べれる。そして濃い目の味付けを冷えたビールで流し込む事で最高の組み合わせが実現している。
腿串はとても食べ応えがある部位で大きめの肉に濃い目のタレがとても良く合う。
一口食べていくたびジューシーな味わいが口一杯に広がった。
つくね串はどうやら鶏肉をミンチにした物でよく見ると黄色のソースがかかっていた。
一口食べると黄色のソースの正体がわかった。
卵の黄身だった。
タレに卵の黄身のまろやかさが加わりとても味わいが深かった。それだけで無く咀嚼していると肉の中にコリコリとした物が入っていて、小気味良い食感がとても良かった。
ヤキトリを食べ終えてトリナンバンに次は手を出す。
此方は先程のカラアゲに具が多めに入った白いソースな様な物がかかっている。
既に鶏肉は切れていたので一切れ皿にソースと一緒に取った。
ソースと一緒に一口食べるとカラアゲ違う美味しさが口一杯に広がった。
まず揚げた鶏肉これには白いソース以外に酸味が強いタレがかかっていてさっぱりとした味わいを口に広げてくれる。そして白いソース、これは先程の食べたマヨネーズに茹で卵、ピクルス、パセリなどが混ざった物だった。これが酸味の強いタレを程よくまろやかにしてくれて、とても良いバランスで味が完成していた。
これはビールでは無く白米が合うと直感的に思いトリナンバンの味が消える前に白米を口に運んだ。すると箸が止まらなく茶碗の半分が無くなった。もう一口トリナンバンを食べ残りのご飯を食べ終わる頃には胃がとても満たされていた。
ご飯を食べ終えると、先輩達も自分と同じタイミングで一息ついていた。
その様子が少し可笑しく、気がついたら3人とも笑っていた。
三人ともお腹が膨れ満足した所でマキ先輩が会話を切り出した。
「そう言えばユイちゃんってSU隊長と何処まで行ってるの?」
いきなりの話題に私はむせた。
復讐 @SUM82a1
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